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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年12月9日 No.3525 欧州におけるサプライチェーンと人権の動向 -労働法規委員会国際労働部会

田中氏

経団連は11月17日、労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)をオンラインで開催した。日本貿易振興機構海外調査部主任調査研究員の田中晋氏が、「欧州におけるサプライチェーンと人権の動向について」をテーマに講演した。概要は次のとおり。

■ 共通価値たる人権への関心の高まり

「共通価値」としての環境や人権に対する各国・企業の関心が急速に高まっている。特に「人権」をめぐって、国際的フレームワークとして国連「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECDのガイドラインが存在するものの、欧米、中国の認識はそれぞれ異なる。

米国は、国際協調へ回帰するなか、対中国では厳しい路線を継続し、環境も含めたアジェンダにおいて欧州に急接近している。また欧州は、人権デュー・ディリジェンス(DD)のEUレベルでの法制化を進めている。欧米各国では、「人権保護」と「対経済政策」を連動させることに加え、人権DDの法制化を進展させている。現在、英国、フランス、オランダ、ドイツ、米カリフォルニア州、豪州などで、サプライチェーン全体での強制労働や児童労働を禁止する、あるいは人権に配慮することを義務付ける個別の法令がある。こうした法令以外にも、国によっては、独自の制裁措置を強化したり、輸出・輸入での規制を行ったりしている。

一方で中国は、米欧等からの批判に対し内政干渉として真っ向から対立し、譲らない構えをみせている。

■ 人権DDの法制化とEUの政策動向

人権DDの法制化については、一部のEU加盟国が先行してきたが、2018年以降、EUレベルでの検討が進められており、21年度内には欧州委員会が指令案を発表する予定である。これまでは企業の自主性に委ねるアプローチがとられてきたが、それでは不十分との認識のもと、義務付けによるアプローチへと移行しつつある。また、非財務情報開示指令の改正、紛争鉱物資源に関する規則の制定、輸出管理強化で人権侵害行為への対応等も進めている。

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会合ではこのほか、第109回ILO総会第2部議題への対処方針について議論し、了承した。

【労働法制本部】

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