経団連は12月14日、「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」を公表した。職場のハラスメント防止に関する法律等の施行から1年が経過したことを踏まえ、ハラスメント防止に効果的な取り組み事例を広く展開することを目的に、企業における課題や取り組みについて初めて調査したもの。経団連企業会員400社が回答した(回答率26.9%)。主な結果は次のとおり。
同結果に掲載した多数の事例を参考に、各社における一層の取り組みの推進が期待される。
■ 5年前と比較した相談件数
パワーハラスメントに関する相談が「増えた」(44.0%)が最も多く、これに「変わらない」(30.8%)が続く。相談が増えた背景として、2020年6月に、大企業に対するパワハラ防止義務を柱とする法律が施行されたことに伴い、社会の関心が高まったこと、各社が相談窓口の周知を強化したこと等が考えられる。
他方、セクシュアルハラスメントに関する相談は、「変わらない」(45.3%)が最も多く、妊娠・出産、育児休業・介護休業等に関するハラスメントはいずれも「これまで相談なし」が50%超と最多であった。
■ ハラスメント防止・対応の課題
課題としては、「コミュニケーション不足」(63.8%)、次いで「世代間ギャップ、価値観の違い」(55.8%)、「ハラスメントへの理解不足(管理職)」(45.3%)の順であった(3つまで選択)。
コミュニケーション不足の解消に向けては、企業の半数以上が、「コミュニケーション能力向上のための研修」と「1 on 1ミーティング」を実施していた。
■ ハラスメントの理解促進のための取り組み
ハラスメントに対する正しい理解は予防の要になる。回答企業では、「ケーススタディーやロールプレーを含めた集合研修の実施」(73.5%)を筆頭に、「eラーニングの実施」(66.5%)、「事案等の共有」(61.8%)に取り組んでいる。効果的な取り組みとして、「管理職を対象に定期的にケーススタディーや事例を話し合うワークショップを実施することで、理解度の向上につながる」「グループ会社全体を含めたハラスメント撲滅強化月間を設定し、一斉に朝礼や学習を行う取り組みを長期継続することにより、ハラスメント撲滅の認識が定着した」等の回答が寄せられた。
■ 相談しやすい体制の整備
各社とも相談することへの心理的なハードルを下げるため、さまざまな工夫を行っている。具体的には「人事、社外、コンプライアンス等複数の相談窓口を設置」(82.5%)が最も多く、次いで、相談窓口を記載した名刺サイズのカードの配布、社内イントラネットのトップページへの掲載等による「相談窓口の定期的な周知」(73.8%)。また、半数以上の企業が、なんでも相談窓口を設ける等、相談内容を幅広く受け付けている。
なお、取引先からのパワーハラスメントやカスタマーハラスメントに関しても、パワーハラスメントでは42.5%、カスタマーハラスメントでは34.5%の企業が、相談体制を整備している。
【労働法制本部】