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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年12月16日 No.3526 日本の宇宙開発利用戦略への提言 -中須賀教授から聴く/宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は11月26日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合をオンラインで開催した。東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授から、「宇宙開発利用の新潮流と日本の戦略への提言」と題する説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 世界の宇宙産業の動き

第4次宇宙基本計画(2020年6月閣議決定)では、宇宙をめぐる世界の環境認識を示した。諸外国の宇宙活動の活発化や、民間の宇宙活動の活発化と新たなビジネスモデルの台頭などが起きている。

世界の宇宙産業の市場規模は、16年の37兆円から50年には200兆円に拡大すると予測されている。衛星・ロケットの開発や打ち上げなどの宇宙関連産業に加え、通信・放送サービスなど周辺産業の成長が見込まれるなか、日本がどのくらいシェアを獲得できるかが重要である。

世界の宇宙開発では、2つの大きなゲームチェンジが起きている。

1つ目は、小型衛星コンステレーションによる低価格化やデータ量の増大により、通信や観測の分野で新しい価値が創造されていることである。米国のスペースX社の「Starlink」は、高度550キロメートルに1万2000機の衛星を打ち上げて、宇宙空間からインターネットに接続するサービスを計画しており、すでに約1500機の衛星が打ち上げられた。

2つ目は、国家機関が主導する研究開発に加え、ベンチャーが主導する研究開発が活発化していることである。米国のプラネット社は、180機以上の超小型衛星を打ち上げて、1日に100万枚以上の画像を配信するサービスを計画しており、政府の国家監視局が画像を継続して購入している。

■ わが国の小型衛星コンステレーション

わが国でも、小型衛星コンステレーションを運用するベンチャーが登場している。アクセルスペース社は光学衛星コンステレーションを運用し、Synspective社はSAR(合成開口レーダ)衛星で地表の観測を行っている。わが国の衛星コンステレーションにはスピードの課題があり、次の2つを提言したい。

1つ目に、衛星のサイズごとに開発する拠点企業を選定し、政府が継続的に支援すべきである。米国では政府がサービスの一定額を購入して特定企業の成長を後押ししており、わが国でも政府が利用を確約することで、民間企業の投資を進めたい。

2つ目に、複数省庁の予算で効率的に衛星を開発・利用する仕組みを構築すべきである。政府の宇宙政策委員会基本政策部会の衛星開発実証小委員会では、内閣府から関係省庁に資金を渡して、連携して技術を開発していく「スターダスト」というプログラムを始めた。

日本の衛星技術は、開発や実証を確実にできる衛星しか打ち上げてこなかったため、世界に周回遅れである。失敗を恐れず、新しい技術にチャレンジし、人材育成ができる環境をつくることが必要である。小型衛星コンステレーションや人材のベースとなる超小型衛星の研究開発に継続して投資すべきである。

■ 大学の活動

東京大学の中須賀研究室では、03年に世界初の1キログラム衛星を打ち上げた。これまで13機打ち上げて、今後は3機を打ち上げる予定である。

海外の衛星開発も支援している。18年にルワンダと衛星開発連携協定を結び、19年に超小型衛星を打ち上げた。

UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)という組織には、38大学の52研究室が所属している。UNISEC-Globalという国際的な大学コミュニティーもあり、国連で活動を報告している。

【産業技術本部】

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