Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月13日 No.3528  プロボノ支援の広がりと災害支援における企業の役割 -企業行動・SDGs委員会経団連1%クラブ

企業行動・SDGs委員会経団連1%クラブ(山ノ川実夏座長)は11月26日、会合をオンラインで開催した。2020年に実施した「社会貢献活動に関する調査結果」では、社員が社会的課題に触れて成長する機会としてボランティア活動を認識している企業が増えているものの、ボランティアに参画する社員を増やすことを課題として挙げる企業も多かった。そこで、社員によるプロボノ(注)支援に取り組むパナソニックと、企業と共に被災地支援を行う特定非営利活動法人のETIC.が、支援のあり方についてそれぞれの立場から説明した。概要は次のとおり。

■ パナソニック「共生社会に向けたプロボノ支援」

パナソニックは11年4月に、社員がそのビジネススキルを活かして、チームを組んでNPO・NGOの事業展開力の強化を応援するボランティアプログラム「プロボノプログラム」を開始した。同プログラムは、社会課題の解決を促進するだけでなく、社員が自身のスキルを社会に役立てることで、イノベーションマインドの向上につなげることをねらいとしている。現在までに、延べ330名の社員が参加し、56団体60件のプロジェクトを支援した。

21年にプログラム開始から10周年の節目を迎え、これまでの参加社員・支援団体を対象にアンケートを実施し、社員126名、支援先25団体から回答を得た。

回答からは、プロボノが団体の支援につながるだけでなく、参加した社員にさまざまな変化をもたらしていることがわかった。具体的には、(1)社会感度の向上(2)多様性への理解や自己効力感・主体性の向上(3)仕事にも活きる経験(4)自律的なキャリアを考えるきっかけ(5)企業市民活動による自社への愛着・ロイヤルティーの向上――などである。

これまで、多様な参加形態のプログラムを提供するなど、社員の社会参画促進に向けて、地道に取り組んできたが、参加者の裾野のさらなる拡大をいかに進めるかが課題である。新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、オンラインの活用が進み、全国からの参加が増えつつある。社員が参加しやすい環境づくりに向けて、人事など関連部門との連携や管理職の理解、参加も促進したい。

■ ETIC.「災害時における企業との協働」

地域の人口減少、高齢化、経済衰退が問題となるなか、04年の新潟県中越地震以降は、被災前の状態に戻す「復旧」ではなく、元の状態を底上げするような「復興」が重要とされている。復興には数年かかるが、被災地のボランティア数は、被災から3カ月以降に激減する傾向があるため、それを見据えた地域の基盤強化が欠かせない。

東日本大震災で、ETIC.はそれまでの起業家支援の経験を活かして、被災地で活動するリーダーを支える若手人材を派遣する「右腕プログラム」を実施した。その際、花王、電通、JCB、ベネッセ等と企業コンソーシアム「みちのく復興事業パートナーズ」を立ち上げ、右腕プログラムへの参画、中間支援組織やリーダーのコミュニティー形成などの活動を21年3月まで行った。

被災地では、資料作成、情報の蓄積・可視化、会議運営など、企業人の一般的なビジネススキルを必要とする機会が多い。

社員の派遣にあたり、2~3週間程度のローテーション型派遣が有効であるが、初期に、社会貢献担当者など中核的に関与できる責任者が現地に入ることで、他の社員が関わりやすくなる傾向がある。プロボノを検討する企業は、ボランティア休暇、兼業副業などの会社の制度と、社員の自発的・有志的な動きをどのようにつなげるかを考えてほしい。

ETIC.では、その後の災害でも中間支援組織の基盤を強化してきた経験を活かし、災害が起こる前から支援に必要な資金や人材を準備するための「事前シミュレーション研修」を始める。企業にも参加してもらい、災害が起きた場合、自社であればどのような支援ができるか考える機会にするとともに、平時からの地域とのつながりづくりの機会としてほしい。

(注)プロボノ=職業上、持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献をするボランティア活動

【SDGs本部】