1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年1月27日 No.3530
  5. 提言「持続可能でレジリエントな観光への革新~改定『観光立国推進基本計画』に対する意見」を公表

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月27日 No.3530 提言「持続可能でレジリエントな観光への革新~改定『観光立国推進基本計画』に対する意見」を公表

経団連は1月18日、政府の「観光立国推進基本計画」改定に向けた提言を取りまとめ公表した。同提言では、外部要因の影響を受けやすい観光の持続可能性を高める観点から、政府に対して、原点に立ち返るとともに、現計画の成果や諸課題を踏まえながら、観光立国のあり方を定め、その実現の牽引役を担うよう求めている。概要は次のとおり。

1.観光立国の実現に関する施策についての基本的な方針

観光立国推進基本法では、政策の基本理念として「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を掲げている。同法の立法過程で2003年4月に取りまとめられた「観光立国懇談会」報告書では、観光の原点は物見遊山にとどまらず、地域の発展に貢献していくことにあるとしたうえで、観光立国に向けた改革の方向性として、「自律的観光」「新しい型の観光」「持続可能な観光」の3点を挙げている。

コロナ禍で人の往来への関心が高まるなか、観光の活性化には受け入れ地域における理解と協力が不可欠である。基本法が示す基本理念に立ち返るとともに、この3つの方向性に沿って施策をアップデートし、地域に貢献する観光へと革新を図る必要がある。また、厳しい状況下にある観光が産業として確固たる地位を築いていけるよう、前述した3点に加えて、4つ目の方向性として「担ってよしの観光」の実現を求める(図表参照)。

2.観光立国の実現に関する目標

観光立国の実現に関する目標は、基本的な方針のもと、個別の施策にしっかりひも付けて設定し、数値目標が独り歩きしないよう管理すべきである。また、目標の達成状況の検証に際しては、統計の見直しやデジタルの活用によって精緻なデータを収集するとともに、自己評価だけでなく、外部評価も活用することが望ましい。

3.観光立国の実現に関し、総合的かつ計画的に講ずべき施策

(1)「自律的観光」

地域ごとに強みとなる観光資源は多様であり、幅広い関係者の連携のもと、一つの会社のように発展を目指す「観光地域経営」の推進が重要となる。その司令塔として、観光地域づくり法人(DMO)の活用が期待されている。同法人の活性化を図るため、人材や財源、権限の確保に向けた取り組みなどが求められる。

(2)「新しい型の観光」

わが国の観光は、特定の時期や地域に需要が集中する問題を抱えている。コロナ禍を契機に、働き方の変化や過密への懸念が高まるなかで、ワーケーションやアドベンチャーツーリズムへの注目が高まっている。両者は、滞在型の観光として需要の拡大と平準化をもたらす可能性を秘めており、積極的な推進が期待される。また、多様な地域へのインバウンド効果の拡大に向けて、富裕層や良質な訪日客向けのコンテンツの造成、MICE(注1)の誘致・創出等を推進していく必要がある。

(3)「持続可能な観光」

観光振興と同時に、地域における観光の負荷を回避し、住民との共存や自然・文化などへの一層の配慮が求められている。レジリエントな地域づくりにつなげる観点からは、サステイナブル・ツーリズム(注2)の推進などが期待される。

(4)「担ってよしの観光」

長年の課題である生産性の向上に向けて、官民連携によるデータ基盤の整備や、デジタル技術の活用による業務の効率化を進めるべきである。また、観光産業を支える人材の働き方や処遇を改善することも必要である。これらの課題の実現に向けて、政府や自治体においては、縦割りを排し、一丸となって推進し得る体制を構築すべきである。

(注1)M(Meeting)、I(Incentive Travel)、C(Convention)、E(Exhibition/Event)の頭文字をとった造語

(注2)UNWTOでは「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義

【産業政策本部】

「2022年1月27日 No.3530」一覧はこちら