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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月10日 No.3532 不正競争防止法をめぐる課題 -知的財産委員会企画部会

経団連は1月17日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会企画部会(長澤健一部会長)を開催した。経済産業省経済産業政策局知的財産政策室の渡邊佳奈子室長から、不正競争防止法(不競法)をめぐる課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 政府の検討状況

近年、不競法の改正が2回行われた。2015年の改正では、技術流出を防止するため、営業秘密(注1)の保護を抜本的に強化した。18年の改正では、価値あるデータの利活用を推進するため、世界で初めて「限定提供データ(注2)制度」を創設した。

法改正後、企業をめぐる社会経済情勢が大きく変化した。新型コロナウイルスを契機としてデジタル化が進展し、働き方ではテレワークが普及し、技術やデータの保全の要請が強まっている。技術やデータ・ノウハウを含む「情報財」をカバーする不競法の役割が大きくなるなか、限定提供データに関する規律の見直し時期が今年7月に迫っている。

経済産業省が開催する産業構造審議会の不正競争防止小委員会において、昨年12月から不競法をめぐる課題について議論を開始した。今年4月に中間報告書を取りまとめるほか、「限定提供データに関する指針」などを改訂する予定である。

■ 不競法の課題

不競法の課題として、以下の4つが挙げられる。

1つ目は、不正競争の立証負担の軽減である。15年の法改正で原告(被害者)の立証負担を軽減する規定が導入されたが、依然として証拠収集が困難である。現行制度の対象となる情報は、技術上の秘密の一部に限定されているが、営業秘密全般や技術上の秘密全般まで対象を拡大するか検討する。

2つ目は、損害賠償額算定規定の見直しである。不競法の損害賠償額の算定規定は特許法をベースに整備されたが、必ずしも営業秘密侵害の事案において活用されていない可能性がある。データ保護の観点から、規定の解釈の明確化などを検討する。

3つ目は、ライセンシー(技術実施者)の保護制度である。オープン・イノベーションが進展し、自社の技術の使用を他社に許可するライセンス契約を結ぶ機会が増加している。ライセンサー(技術保有者)が事業を第三者に譲渡した場合、ライセンシーが譲受人に対して技術の使用継続を主張するため、特許法や著作権法ではライセンシーの保護規定が整備された。データのライセンスの活発化が想定されるなか、不競法におけるライセンシーの保護制度の創設を検討する。

4つ目は、国際裁判管轄と準拠法である。15年の法改正以降も、わが国の重要技術が海外に流出している。一定の場合に、日本の裁判所に国際裁判管轄を認める旨の規定や、複数の国にまたがる事案で日本の不競法が準拠法となる旨の規定の新設を検討する。

(注1)(1)秘密として管理されている(2)公然と知られていない(3)事業などに有用――の3要件を満たすもの。企業が保有する技術やノウハウ等の情報を想定している

(注2)(1)業として特定の者に提供する(2)電磁的方法で蓄積される(3)電磁的に管理される――の3要件を満たすもの。事業者が取引等を通じて第三者に提供する情報を想定している

【産業技術本部】

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