Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月17日 No.3533  21世紀政策研究所が中国セミナー「中国の重要政策を展望する」を開催

21世紀政策研究所(十倉雅和会長)の中国研究プロジェクト(研究主幹=川島真東京大学教授)は2月1日、会員企業から約200人の参加を得てオンラインセミナー「中国の重要政策を展望する~科学・マクロ経済・新疆問題」を開催した。「科学」「ポストコロナのマクロ経済」「新疆」の視点から中国の重要政策を分析した。概要は次のとおり。

■ 科学でかなえる「中国の夢」
~国境からはみ出る習近平の国内ガバナンス(益尾知佐子九州大学准教授)

習近平国家主席は、中華民族の偉大な復興と人類運命共同体実現に向けて科学技術を最重要視している。科学者への支援に加え、陸・海・空・宇宙を一体とする新型インフラ建設、国土と管轄海域に張り巡らした空間ネットワークによる監視管理の強化を進めている。名目は国内ガバナンスの強化だが、この空間ネットワークは地球全体をカバーすることから、世界の安全保障のあり方が問われる。また、中国漁船には北斗衛星を利用したシステム端末が搭載され、当局は漁船の出入港、漁獲量を管理している。漁民にとっても、海上で好漁場の位置や水産物の市況を確認できるほか、乗組員の家族との通信や補助金の受領なども可能であるため便利なシステムとして受け入れられている。

■ ポストコロナの中国のマクロ経済政策
~「三本の矢」はどう放たれたか(梶谷懐神戸大学教授)

第一の矢は、迅速かつ大胆な金融緩和。第二の矢は財政政策(ただし、個人や業者への現金給付には消極的で社会保険料の減免も不十分)。第三の矢はポストコロナの成長戦略(5Gによる新型インフラ建設と国内大循環の二本柱)。巨額の利益を得るIT企業たたきは、中国がこれまで行ってきた「目立つものをたたく」手法であり、格差や社会の分断の克服と「共同富裕」の実現を印象付けている。

■ 新疆問題の諸相(熊倉潤法政大学准教授)

新疆問題には、在外ウイグル人や欧米からの批判と中国側の論理との間で大きな隔たりがある。先端技術と人海戦術による監視が強化され再教育施設への収容は100万人を超える。ウイグル人のエリートやアイドルを含む著名人に加え、産児制限を超えた出産などを理由に一般市民が拘束される事例が報告されている。中国側は監視や収容もテロや脱貧困への対策であるとし、ジェノサイド論に対しても人口は増えていると主張する。強制労働が疑われる綿花の収穫への動員についても中国側は自発的なものとしている。

左から川島氏、益尾氏、梶谷氏、熊倉氏

<パネルディスカッション>

講演後、川島研究主幹をモデレーターに、益尾、梶谷、熊倉の3氏によるパネルディスカッションを行った。「中国の新型インフラ建設には、相手国の実情に応じて普遍的価値などを持ち出すことなく支援することによりローコストで全世界へ公共財を提供するねらいがある」「地球規模の空間ネットワークへの対応として、中国の情報を読む努力、中国に情報開示を求める努力が必要である」などの指摘があった。

【21世紀政策研究所】