Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月10日 No.3536  春季労使交渉・協議の焦点〈6〉 -雇用保険法の改正

春季労使交渉・協議が本格化するなか、6回にわたり同交渉・協議の焦点等を解説する。最終回は、雇用保険法の改正について取り上げる。

Q 今般、雇用保険法が改正されるそうですが、その趣旨は何ですか。

A 新型コロナウイルスの感染拡大による失業予防対策として、雇用調整助成金が積極的に活用されています。雇用維持に大いに役立っている半面、多額の支出によって危機的な状況に陥っている雇用保険財政に対応することが、法改正の一番の趣旨です。

Q 法改正のポイントを教えてください。

A 改正内容はさまざまですが、ここでは企業実務に関係が深いと思われる改正事項を中心に3点に絞って紹介します。
1点目は、雇用保険料率についてです。コロナ禍前の雇用保険財政は剰余金が潤沢に積み上がっていたため、本則から料率を引き下げ、2021年度は1000分の9となっています。
コロナ禍で財政が急激に悪化したことから、本来であれば22年度の料率は本則の1000分の15.5に戻るところ、保険料を納める労使の負担増をできるだけ回避するために激変緩和措置を講じています。具体的には、22年度の上期は1000分の9.5、下期は1000分の13.5という、年度内に料率が変わる異例の措置となります。
2点目は、失業等給付に要する費用に対する国庫負担割合についてです。雇用情勢や雇用保険財政が大きく悪化した場合には4分の1、それ以外の場合は現行と同じ40分の1としたうえで、雇用情勢の急激な悪化時等に迅速に対応するために、一般会計から雇用保険財政に繰り入れる規定が常設化されます。
3点目は、給付面の暫定措置の扱いについてです。22年3月末で期限を迎える基本手当にかかる給付日数の各種拡充措置等は、24年度(一部、当面の間)まで延長されます。

雇用保険法改正の概要

Q 施行はいつからになりますか。

A 改正法案は2月1日に国会に提出され、審議が始まっています。年度内に可決成立し、この4月から施行される見込みです。

Q 今年の春季労使交渉・協議にはあまり関係がないのでしょうか。

A 改正内容の1点目で紹介したように、22年度は年度当初からではなく後半から雇用保険料率が上がります。この保険料率における激変緩和措置は22年度限りです。雇用保険財政が大幅に改善しなければ、23年度以降の保険料率は本則に復帰する可能性が非常に高くなります。
今次労使交渉において、月例賃金引き上げや賞与・一時金の増額を検討する際には、雇用保険料率アップに伴い法定福利費が増える見込みであることも踏まえた原資の確保が望まれます。

【労働政策本部】


春季労使交渉・協議の焦点(全6回)
〈1〉連合の春季生活闘争方針
〈2〉経営側の基本スタンス
〈3〉働き方改革深化の重要性
〈4〉日本型雇用システムの見直し
〈5〉育児・介護休業法の改正
〈6〉雇用保険法の改正