Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月17日 No.3537  全米各州探訪(16)~ネバダ州、アイダホ州、オレゴン州 -新・ワシントンレポート<16>

本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。

46.ネバダ州

銀の発見をきっかけに地域人口が増え、1861年、ネバダ準州としてユタ準州から分離したのが直接の興り。64年に連邦加盟した36番目の州である。州名は州西部を走るシエラネバダ山脈に由来する。「ネバダ」はスペイン語で「雪に覆われた」の意である。

州誕生のきっかけともなった鉱業が引き続き経済の一角を占める。特に金・銀・銅の生産で知られている。

最大都市ラスベガスはカジノの都として広く知られる。世界恐慌時の税収確保策として解禁されたカジノは今日、観光業と合わせて、州一般会計歳入の4割、雇用総数の4分の1を占める重要産業となっている。また、ラスベガスコンベンションセンターなどの大型施設を擁し、テクノロジー見本市(CES)が毎年開催されるなど、国際会議や展示会も多く開催されている。

ラスベガスで開催される大型見本市・CESには、世界最先端の電子機器が集う。
コロナ禍を受け、2021年は完全オンライン、22年は日程を短縮してハイブリッド開催となった

同州は、所得税・法人税を課さないなど、自由なビジネス環境を整備している。日本企業も、電気自動車向けの大規模蓄電池工場などが進出している。

州の大部分を連邦政府の所有地が占め、ラスベガスの北西には核実験場が立地する。ユッカマウンテンに高レベル放射性廃棄物の地層処分施設を建設する計画も存在する。しかし、同州選出で前・上院民主党院内総務の故ハリー・リード議員が強く反対してきたこともあって、実質的に頓挫した状態にある。

政治面では、1980年代ごろまで共和党が優勢だったが、人口増に伴って民主党支持層が増加し、近年は競り合いが演じられている。大統領選は2008年以来民主党が制しているほか、現在の連邦上院議員2名、下院議員4名中3名が民主党議員である。

47.アイダホ州

オレゴン地域を分割し米国領と確定した領域の一部から成る。1890年に連邦に加盟した43番目の州である。

米国内はもとより日本でも広く知られるアイダホポテトの名のとおり、全米最大のジャガイモの生産地である。農業全般に加え、食品産業も盛んである。北部・中部を中心に州の4割が森林に覆われ、林業や製紙業も行われている。

軽石をはじめとする工業鉱物資源や、銀等の金属鉱物を産出するほか、「宝石の州」の愛称のとおり、幅広い種類の宝石を生産する。

コンピューター用メモリーを手がけるマイクロンが本拠を置くなど、半導体産業も盛んである。

州東部には、原子力研究を行うアイダホ国立研究所が立地する。同研究所は、50基を超える実験用原子炉の設計、軍用艦向けの原子力推進機構の実証などを担ってきた歴史を持つ。

政治面では、連邦上下院議員と州知事の全員が共和党である。特に連邦上院では、ジム・リッシュ議員が外交委員会、マイク・クレイポー議員が財務委員会(通商や税制を管轄)において、それぞれ共和党トップを務める。

48.オレゴン州

ロッキー山脈以西の太平洋岸、カリフォルニア州(当時はメキシコ)以北の地域に形成されたオレゴン地域(Oregon Country)を州の前身とする。19世紀初頭から欧米人の入植が始まった同地域は、1818年に米英の共同統治下に置かれた後、46年に北緯49度線に沿って米領と英領に分割された。このうち米国領は48年にオレゴン準州となり、59年、その一部がオレゴン州として連邦に加盟した。

多角化された農業や、食品加工業が盛んである。また、州の約5割を占める森林を背景に、全米最大の製材産出州となっている。

シリコンフォレストとも称されるハイテク産業は、5万人の雇用を支える州の重要産業である。また、太平洋岸という立地から、製造業従事者の4分の1が貿易関連業務に携わるなど、交易の存在感も大きい。

州内にはスポーツ用品メーカーであるナイキの本社、アディダスの米国本社も所在する。日本企業は、海外勢としては最大の130社余りが進出している。

エネルギー面では、州の発電電力量(事業用)の約7割が再生可能エネルギーに由来する(水力50%、風力14%等)。波力の利用に向けた研究開発も行われている。

政治的にはリベラルな州であり、民主党が強い。これは太平洋沿岸に位置する都市部人口の比重が大きいためである。連邦議員には、ロン・ワイデン上院財務委員長やピーター・デファジオ下院運輸・インフラ委員長がいる。

【米国事務所】

「全米各州探訪 ~「新・ワシントンレポート」連載」はこちら