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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月24日 No.3538 Society 5.0時代のヘルスケアⅢ〈7〉 -各論~基盤

経団連は1月18日、提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ~オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」を公表した。同提言の内容について、具体的な取り組みも交えながら紹介する。最終回は、「基盤(データ活用)」を取り上げる。

■ 社会的意義

これまで述べてきたオンラインヘルスケアのメリットを最大化させるためには、その活用によって得られるさまざまな健康・医療データを連携・活用できる仕組みが必要不可欠である。個人のヘルスケアに関するライフコースデータをIDで連携し、本人同意のもと、医療機関の間で情報連携することにより、適切な医療の提供、民間PHR(パーソナルヘルスレコード)の蓄積情報を活用したアプリによる健康管理、個人に合わせた予防行動が可能となる。優れたヘルスケアサービスを開発するためにも、データに基づいた研究が不可欠である。また、産学官医連携のもと厚生労働省で進めている全ゲノム解析等実行計画の進展は、新たな治療法の開発や個別化医療につながる。

■ 企業の取り組み~アステラス製薬の事例

アステラス製薬は、創薬研究や開発、製造、販売など、バリューチェーン全体を通じて膨大なデータを取り扱っている。具体的には、人工知能や機械学習といった最先端のデータサイエンス技術を駆使してデータを解析し、得られた知識や仮説に基づき検証実験などを繰り返す、データ駆動型の創薬を目指して研究を進めている。また、製品が発売された後は、電子カルテやレセプトデータを活用してマーケティングの戦術や戦略の立案支援、医薬品の新しい適応症の探索や製剤方法の考案を含む製品の価値向上などにも取り組んでいる。同社のアドバンストインフォマティクス&アナリティクスのネイト・クライセル部門長は、「近年、医療やライフサイエンスに関するデータや情報は爆発的に増加しており、これまでになかった価値を創出するための新たな機会が数多く生まれている。データから得られる新たな知識を通して科学の進歩を患者の価値に変えていく」と想いを語る。

アステラス製薬 バリューチェーン全体に広がるデータ活用の機会

■ 課題と提言

健康・医療分野においては、取り扱うデータの多くが要配慮個人情報を含む機微なデータであるほか、医療機関で取得されたデータは医療機関において管理されている。そのため本人であってもアクセスが容易でないことが多く、十分なデータ活用がなされていない。電子カルテ情報を含む医療情報をマイナポータルで閲覧できる仕組みを整備し、APIを通じて民間PHRへ早急に連携することで、自身の健康・医療情報に障壁なくアクセス・利活用できるようにすべきである。また、大規模医療データベースの利活用においては、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)とその他の公的データベースおよび死亡情報との連結を実現するとともに、データ提供までの手続きの迅速化や、クラウドで利活用できる仕組みなどの環境整備を進めるべきである。データ利活用の重要性が増すなか、研究の機会損失を招いたり、データ利活用を阻害したりしないよう、倫理審査委員会の質の均てん化も必要である。

【産業技術本部】


Society 5.0時代のヘルスケアⅢ(全7回)
〈1〉各論~健康管理・増進
〈2〉各論~診療
〈3〉各論~調剤・服薬指導
〈4〉各論~手術
〈5〉各論~介護
〈6〉各論~治験
〈7〉各論~基盤

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