Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月21日 No.3542  大きな成果を収めた岸田首相の訪印 -南アジア地域委員会

加納氏

経団連は4月4日、南アジア地域委員会(冨田哲郎委員長、平野信行委員長)を開催した。加納雄大外務省アジア大洋州局南部アジア部長から、3月の岸田文雄内閣総理大臣によるインド訪問の概要と成果等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 安全保障をめぐり連携を確認

岸田首相は、3月19日に、就任後初の二国間訪問としてインドを公式訪問し、モディ首相と会談した。

ロシアによるウクライナ侵略をめぐり、インドの対応が世界の関心を集めている。インドは軍事面でロシアに依存しているほか、中国との国境問題をめぐり、カウンターバランスとしてロシアを重視している。国連安全保障理事会に提出されたロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案でインドは棄権したが、日本と基本的な問題意識が異なるわけではなく、苦渋の選択と受け止めている。

そうしたなか、今回の岸田首相の訪印では、日印がどこまで足並みをそろえていけるかが大きな論点であった。首脳会談では、岸田首相はロシアのウクライナ侵略をあらためて厳しく非難したうえで、国際社会が団結して毅然と対応する必要があるとの日本の立場を強調した。両首相は、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現に向けた取り組みを日印や日米豪印等で一層推進していく重要性を確認し、インド太平洋のみならず、いかなる地域においても、力による一方的な現状変更を許してはならないこと、国際法に基づき平和的解決を求める必要があることで一致した。日米豪印4カ国の連携枠組み「QUAD」の首脳会合が今年日本で開催される予定であり、日印間の連携を確認できた意義は大きい。

また、首脳の年次相互訪問を再び軌道に乗せることで合意するとともに、サプライチェーンの多元化、強靱化等、経済安全保障上の共通課題に取り組むこととした。

■ 官民が協力し経済関係の一層の強化を

さらに、岸田首相は今後5年間で、インドに対する官民合わせて5兆円の投融資目標を設定するとともに、インド側に対して、目標達成に向けた投資環境の整備を求めた。また、世界全体でのカーボンニュートラル、多様かつ現実的なエネルギートランジションに向け、「日印クリーン・エネルギー・パートナーシップ」を立ち上げ、気候変動対策における日印協力を推進することに合意した。

その他、国交樹立70周年を契機とした二国間の人的交流促進、地域情勢やグローバルな課題等をめぐり幅広く議論するなど、大きな成果を挙げた。

インドは今後、超巨大市場となるポテンシャルを秘めた国である一方、日米や日中の経済関係と比較すると、まだその伸びしろを活かしきれていない。日本政府は、ODAやOOF(Other Official Flows、その他政府資金)等、公的資金を活用してインドへの投融資を進めるとともに、インドの投融資環境の改善に向けてインド政府への働きかけを行い、民間企業からの投融資の呼び水としたい。経済界には、さらなる日印経済関係強化への協力を期待したい。

【国際協力本部】