経団連は4月8日、金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォースを開催した。経済産業省経済産業政策局の前田翔三企業会計室長から、「経済産業省・内閣官房の非財務情報開示関連の取り組み」について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 経産省「非財務情報の開示指針研究会」の取り組み
国際会計基準(IFRS)財団における国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立および基準開発など、国際的な非財務情報開示についての指針の策定に向けた動きが活発化している。こうした国際的な動向を踏まえて、経産省では、わが国や世界において質の高い非財務情報の開示を実現するための開示指針のあり方を検討すべく、昨年6月から、「非財務情報の開示指針研究会」(研究会)を開催している。
研究会では、IFRS財団から昨年11月に公表された「全般的要求事項のプロトタイプ」「気候関連開示のプロトタイプ」について分析してきた(※)。プロトタイプには、68の産業別に詳細な開示を求める内容が含まれていることから、今年1月下旬から3月にかけて、経産省が所管する業界団体をはじめ各団体に対して、意見を募集した。研究会ではその回答も踏まえて検討し、プロトタイプに対する研究会としての基礎的見解を3月25日に公表した。その要点は、次のとおりである。
(1)プロトタイプにおいて、サステナビリティ情報が企業価値と明確に結び付けて定義されたことに賛同する。
(2)IFRS財団の取り組みにより、サステナビリティ情報についての企業間の比較可能性が高まることについても賛同する。一方で、企業の競争力の源泉やビジネスモデルが多様となっており、企業間で共通の指標や目標等を開示するだけでは、企業価値評価を適切に行うことが難しい。よって、開示項目が過度に細則的になることで、開示情報と企業価値の関連性が減じることは避けるべきである。
(3)前述の(1)および(2)を踏まえ、①原則主義に基づく基準づくりを行うこと②産業別の指標等が過度に細則的にならないようにすること③企業が開示項目を判断するためのマテリアリティ(重要性)のガイダンスを作成すること④ビジネスモデルの開示を充実させること⑤既存のベストプラクティスに基づいて基準開発を行うこと――等を提案する。
■ 内閣官房「非財務情報可視化研究会」の取り組み
岸田政権では、新しい資本主義の実現に向けて、人的投資の拡大が重要なテーマとなっている。人件費は費用計上される一方で、長期的な視点でみると、企業の持続的な価値創造を行う原動力となることから、資本市場に自社の人的投資の重要性が理解されることが重要になる。そこで、人的資本などの非財務情報についての価値を評価する方法について検討し、企業経営の参考となる指針をまとめるため、今年2月に、内閣官房の新しい資本主義実現本部事務局に「非財務情報可視化研究会」を設置した。
これまで、2月から3月にかけて3回の会合を開催した。4、5月と検討を重ね、夏までに参考指針案を固めたいと考えている。
※ プロトタイプは、ISSBから公表された基準案(3月31日公表)の基礎となっている。その概要は、経団連タイムス4月7日号掲載「IFRS財団のTRWGプロトタイプの概要とSSBJの設立」を参照
【経済基盤本部】