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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年5月19日 No.3544 人権を尊重する経営の推進に向けた業種横断的取り組み -企業行動・SDGs委員会

経団連の企業行動・SDGs委員会(二宮雅也委員長、中山讓治委員長、吉田憲一郎委員長)は4月6日、「『人権を尊重する経営のための業種・地域連携』を考える会」をオンラインで開催した。会員企業から約160名が出席した。冒頭、上脇太同委員会企画部会長が開催趣旨を説明。「ビジネスと人権への取り組みにおける業種やセクター横断型の連携イニシアティブの活用は、知識の共有・蓄積、影響力の強化、効果的措置の拡大などを可能にする」と、業種団体等との連携の重要性を述べた。

続いて、電子情報技術産業協会(JEITA)、コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)、責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)がそれぞれ取り組み事例を紹介・共有するとともに、出席者との間で意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ JEITA「共同的苦情処理メカニズム構築への取り組み」

JEITAのCSR委員会では、サプライチェーンにおける人権や環境などの課題に会員が共同して取り組むため、「責任ある企業行動ガイドライン」を策定するとともに、サプライヤー向け自己評価シートの作成や教育・啓発活動などを通じて、業界全体でCSR調達管理の効率化を進めてきた。次なる共通課題として、苦情処理を取り上げることとした。

国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デュー・ディリジェンス(DD)への取り組みは一定程度進んでいるが、苦情処理への取り組みはまだ進んでいない。指導原則では苦情処理メカニズムに関して、(1)自社やサプライヤーの従業員のみならず、権利保持者とその代理人である組織など幅広いステークホルダーが利用できること(2)法令遵守のみならず、人権や環境など国際行動規範に基づく、責任ある企業行動の問題を提起できること――を求めている。これまでの内部通報制度とは次元が異なり、そのノウハウも蓄積されておらず、公正・公平で実効性の高い苦情処理メカニズムを1社で導入するのは難しい。

そこで、JEITAでは、「ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク」と共に、「一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構」(JaCER)を設立することとした。JaCERは、指導原則に基づく苦情処理のプラットフォームを提供し、中立的な立場から参加企業を支援するとともに、日本産業界の国際的な信頼度の向上を目指す。

■ CGF「サプライチェーンにおける強制労働排除に向けた取り組み」

CGFは、消費財企業の業界団体であり、70カ国以上から約400社が加盟している。その特徴は、CEOから成る理事会が運営にコミットメントしていることにある。2015年の強制労働にかかる決議および翌年に承認された「業界の優先的な原則」に基づき、(1)個社事業における強制労働に焦点を当てた人権DDシステムの導入(2)マレーシアのパーム油サプライチェーンにおける人権DDのシステムの導入(3)雇用市場の発展に向けた支援――の三つを重点分野において活動をしている。

日本では、19年2月に社会的サステナビリティ・ワーキング・グループを設立した。先進企業の取り組み事例の研究からスタートし、各社の取り組みの共有、専門家からのヒアリングなどを重ねて、21年に「外国人労働者の責任ある雇用ガイドライン」を策定した。同ガイドラインは、自社だけでなく、外国人労働者を雇用しているサプライヤーや製造委託先が活用できるよう、「使い手」を意識した解説書とした。仲介業者の選定から、採用、雇用、帰国までの雇用工程ごとに起こり得る課題を明記し、具体的な取り組みを「必須」と「任意」に分けて記載している。今後、社内やサプライヤー、製造委託先、監理団体においてガイドラインの活用を促進するとともに、人権DDを推進する際の「障壁」を明確にして解決しながら、着実に外国人労働者の責任ある雇用への取り組みを進化させていきたい。

■ JP-MIRAI「外国人労働者向け相談・救済パイロット事業への取り組み」

JP-MIRAIは、日本が外国人労働者を適正に受け入れ、世界の労働者から信頼されて選ばれる国となることを目指して、民間企業、自治体、NPO、弁護士等の多様なステークホルダーが集まり、20年に設立した。国際協力機構(JICA)が共同事務局を務めており、現時点の会員は423企業・団体である。

JP-MIRAIでは、現在、主に外国人労働者への情報提供、外国人労働者相談・救済パイロット事業等に取り組んでいる。情報提供では、JP-MIRAIポータルサイトを立ち上げ、外国人労働者が来日前から正しい情報を得て、日本におけるキャリア形成や生活、労働上必要な知識等を得られるようにしている。

救済パイロット事業の目的は、外国人労働者が抱える課題の早期解決、企業の人権DDの取り組みおよび救済メカニズム構築の支援である。参加企業およびその関係会社で働く外国人労働者を対象に、多言語の情報提供によりトラブルを未然に防止するとともに、労働に限らず生活や健康面等の相談を母国語で受け付けて、極力早い段階で解決できるようにしている。あわせて、トラブルが深刻化する可能性の高い案件については伴走支援を行う。伴走支援は、自治体やNPO等の提携パートナーに協力を依頼する。どうしても解決できない場合は、東京弁護士会の裁判外紛争解決(専門ADR)の活用も想定している。

【SDGs本部】

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