Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年5月26日 No.3545  「多様化する労働契約のルール」と「解雇無効時の金銭救済制度」 -労働法規委員会労働法企画部会労働時間制度等検討ワーキング・グループ

田村氏

経団連は4月19日、労働法規委員会労働法企画部会労働時間制度等検討ワーキング・グループ(池田祐一座長)をオンラインで開催した。厚生労働省労働基準局労働関係法課の田村雅課長から、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」と「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」の報告書について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書

同検討会は、労働契約法第18条に基づく「無期転換ルール」に関する見直しと、職務や勤務地、労働時間を限定したいわゆる「多様な正社員」の労働契約関係の明確化等について、3月30日に報告書を公表した。

(1)無期転換ルール

同ルールは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約に転換できるというものである。同報告書では、現時点で権利発生までの通算期間といったルールの根幹を見直す必要はないとしつつも、労使双方が情報を共有し、企業の実情に応じて適切に活用できるようにしていくことが適当とした。

具体的には、(1)無期転換申込権が発生する契約の更新時に、権利が発生することと無期転換した場合の労働条件の労働者への通知(2)労働契約期間の更新上限の有無とその内容の労働者への明示(3)最初の労働契約締結より後に更新上限を設ける場合、労働者の求めに応じて上限を設定した理由の説明――を使用者に義務付けるべきとしている。

(2)多様な正社員の労働契約関係の明確化

多様な正社員の労働契約内容については、労使紛争の未然防止や予見可能性の向上等の観点から、法令上の措置も含めて労働契約関係の明確化を検討するよう求めている。

例えば、現行の労働基準法第15条(労働条件明示)は、雇い入れ直後の就業の場所と従事すべき業務の明示を求めており、勤務場所や業務内容の変更範囲までは求めていないが、予見可能性の向上等の観点から、多様な正社員に限らず労働者全般について、同法第15条による明示の対象に就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当としている。また、現行の同法第15条の明示は、労働条件の変更時にまでは義務付けていないが、変更後の労働条件の書面確認の必要性に鑑み、変更内容を書面で明示する義務を課す措置が考えられるとしている。

■ 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会報告書

同検討会では、仮に解雇無効時の金銭救済制度を導入する場合に、法技術的観点から考えられる仕組みや検討の方向性について、4月12日に報告書を公表した。

同報告書では、労働者からの申し立てに限ることを前提としたうえで、無効な解雇・雇い止めをされた労働者が、訴訟または労働審判において金銭救済を請求し、無効判決確定後に使用者が労働者に「労働契約解消金」(あるいは同解消金にバックペイ(注)を加えた金銭)を支払うことで労働契約が終了する仕組みが考えられるとしている。

また、労働契約解消金の算定方法については、給与額や勤続年数、年齢、合理的な再就職期間、解雇にかかる労働者側の事情、解雇の不当性などを考慮要素とした一定の算定式を設けることが考えられるとしている。

両検討会の報告書の内容を踏まえ、今後、労働政策審議会で検討する予定である。

(注)バックペイ=解雇無効の場合に民法の規定に基づき発生する当該解雇以降の未払い賃金

【労働法制本部】