次世代医療基盤法は施行5年後をめどに見直すこととされており、内閣府健康・医療戦略推進事務局では、医療情報の研究利用を促進する観点から検討を進めている。
そこで、経団連は6月30日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を対面とオンラインのハイブリッド形式により開催した。同事務局の西村秀隆次長から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 次世代医療基盤法の概要
次世代医療基盤法は個人情報保護法の特例法と位置付けられ、認定事業者が病院などから提供された医療情報を集約、匿名化したうえで研究現場において活用できるようにするものである。同法は、研究成果の社会への還元というサイクルを円滑に回すことを企図し、(1)個人情報の保護(2)医療情報の利活用促進――の両立を目的とする。
認定事業者では極めて厳格なセキュリティ管理が行われており、義務違反に科される罰則は厳しい。認定事業者への提供データ数は増加傾向にあり、最大約92万人分のビッグデータを提供した事例もある。
同法により、さまざまな主体から多様なデータの収集、名寄せや、アウトカム情報を含む大規模なデータベースを構築することが可能となった。また、主務省庁の認定を受けた民間法人が運営することにより、データ利活用にかかる手続きの合理化が進んだ。今後、データ利活用により、患者に最適な医療の提供、異なる医療機関や領域の情報を統合した治療成績の評価に加え、最先端の診療支援ソフトの開発、医薬品市販後調査等の高度化・効率化等が可能になると期待されている。早期の実現を願っている。
■ 次世代医療基盤法の見直しに向けて
次世代医療基盤法の目的のひとつである個人情報保護については、認定事業者で厳格なセキュリティ管理がなされていることもあり問題はないとみている。他方、医療情報の利活用促進の観点からは、法の見直しが必要と考えている。
具体的には、匿名加工医療情報では対応できない研究現場のニーズとして、希少な症例についてのデータ提供、同一対象群に関する継続的・発展的なデータ提供、薬事目的利用での元データに立ち返った検証などが挙げられる。データ・ガバナンスの強化により、提供先での匿名性は維持しつつ、有用性の高いデータを提供し得る仕組みを検討したい。また、電子カルテ情報と、患者の病歴や退院後の投薬継続の有無など受診前後のデータとを連携することへの需要が存在する。そこで、全国民の診療行為情報(レセプト)を網羅的に把握できるNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)と連結して解析できるようにすることを検討している。また、医療機関に加え自治体などに対しても、同法による枠組みへの参画を促したい。
次世代医療基盤法が施行されて4年余りが経過し、データの収集、提供が着実に進んでいる部分もあるが、まだまだ改善の余地がある。利活用する立場からの意見も聴きながら、年末を目途に、具体的な見直し案を取りまとめるべく検討を進めていきたい。
【産業技術本部】