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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月24日 No.3568 わが国が目指すべき経済安全保障の全体像 -外交委員会企画部会

大野氏

経団連は11月1日、東京・大手町の経団連会館で外交委員会企画部会(小久保憲一部会長)を開催した。自由民主党の大野敬太郎経済安全保障推進本部事務局長から、同党が10月に公表した提言「わが国が目指すべき経済安全保障の全体像について~新たな国家安全保障戦略策定に向けて」等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 新しい資本主義と経済安全保障

新しい資本主義のコンセプトは、多岐にわたる社会課題すべてを行政のみで解決するのは困難な時代において、社会課題をビジネスチャンスととらえ、官民連携で解決しつつビジネスを行う、というものである。例えば防災は、以前は行政が担うものと考えられてきたが、今では企業のBCP(事業継続計画)に組み込まれている。経済安全保障のリスクも同じように認識する必要がある。

経済安全保障推進法や同法の基本方針等には、経済の自由の原則が明記されており、この原則は今後も変わらない。しかし、経済安全保障上のリスクを見落とせば、ビジネスが根こそぎダメになる可能性すらある。経済安全保障のリスクが存在する限定された領域は、政府も関与して手当てする必要がある。

■ 経済安全保障戦略の策定

現行の国家安全保障戦略は、行政が主体的に取り組む外交・防衛が中心であるが、2022年末に改定される同戦略には経済安全保障が含まれる。経済の主体は民間なので、民間とのインターフェースが必要であり、経済安全保障に関する戦略を策定すべきと考えている。

自民党が現在、重視しているテーマは三つある。第1はインテリジェンス能力である。政府内の情報共有を進めることに加え、経済安全保障重点課題検討会議を通じ、各省が抱える事業のリスクを点検することが必要だと考えている。第2はサイバーセキュリティである。内閣サイバーセキュリティセンターが担っている政策立案とオペレーションの機能を分離させる必要がある。また、アクティブ・サイバーディフェンスも重要な論点である。第3はセキュリティクリアランス(適性評価)である。国際共同研究の際に必要とされるのであれば、イノベーションの観点から、新たな法体系として国際的にも整合性のとれた制度を検討すべきである。

■ 経済安全保障を構成する八つの戦略的アプローチ

同提言では、経済安全保障の全体像を構成する八つの戦略的アプローチを掲げている。第1は経済成長であり、最上位の概念である。経済成長なくしては守るものもなくなってしまう。これを支えるかたちで、第2の自律性の向上、第3の優位性・不可欠性の維持・獲得、第4の公正な競争環境の整備、第5の戦略的な対外発信・広報の確立がある。さらに、これらを支えるかたちで、第6のインテリジェンスの強化、第7の体制の整備、第8の人材育成がある。

上記に加え、官民連携の重要性を強調している。例えば、経済安全保障推進法の官民技術協力の分野では、重要な技術を見極めるシンクタンクの議論がなされているが、このシンクタンクを成功へと導くためには民間企業の知見が不可欠である。

【国際経済本部】

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