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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月23日 No.3580 次期SIP(SIP第3期)の研究開発課題の決定 -イノベーション委員会

経団連は2月1日、イノベーション委員会(安川健司委員長、田中孝司委員長)をオンラインで開催した。内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の篠原弘道議員、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の須藤亮政策参与・プログラム統括および植木健司参事官(SIP/PRISM総括担当)から、次期の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP第3期)の課題の決定について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ SIP第3期の特徴

SIPの推進体制

SIPとは、CSTIが府省・分野の枠を超えて自ら予算(注1)を配分し、プログラムディレクター(PD)(注2)のもと、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて実施するプログラムである(図表参照)。

2023年度から始まるSIP第3期では、これまでとは異なり、技術だけでなく、事業、制度、社会的受容性、人材の視点も入れて社会実装を推進する。また、社会実装に向けたステージゲート審査(注3)やエグジット戦略(SIP後の推進体制)を強化し、総合知、スタートアップの参画も積極的に促進する。

■ SIP第3期の研究開発課題

CSTIは、Society 5.0の実現に向けてバックキャストで研究開発課題を検討し、フィージビリティースタディ(FS)の結果も踏まえて、14の課題を選定している。具体的に、「統合型ヘルスケアシステムの構築」では、コロナ禍で医療データの分断が問題となったことを踏まえ、12~13の中核的病院において、異なる電子カルテを用いる各病院の医療情報を統合し、循環器とがんの医学知識を発見するデジタルツイン(注4)の実装にも取り組むことを検討している。また、「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築」では、人生100年時代の学び方をテーマに、学校や企業がバーチャル空間で活用できる学習コンテンツを開発して、特定地域で実証し、参加者の行動変容や産業・地域の変化を検証する予定である。

これらを含めた14課題に加えて、複数の課題にまたがる分野の連携、特にデータ連携について議論することを検討している。

■ SIP第3期の制度・運営面での改革

課題の検討とあわせて、第2期までの制度・運営面での論点を踏まえてSIP第3期の制度設計を行っている。企業関係者がPDに就任すると、所属する親元企業との関係で利益相反が生じる場合がある。このため、利益相反マネジメントポリシーおよび規則を定め、親元企業の利益にかかわるような場合は、各採択委員会における議決に、同企業出身のPDは参加しないこととしている。また、PDと研究機関との間でのコミュニケーションや役割分担が円滑にできるよう、マネジメントガイドラインを策定している。同ガイドラインに基づき、CSTIのガバニングボード、内閣府、研究推進法人(注5)等の3レイヤーのマネジメント体制により課題を推進する予定である。

■ SIP第3期始動までのスケジュール

2月21日まで、14課題に関する「社会実装に向けた戦略及び研究開発計画」(「戦略及び計画」)についてパブリック・コメントを実施するとともに、PDを公募する。3月に「戦略及び計画」とPDを決定し、4月からSIP第3期を始動する。

SIPを通じて革新技術の社会実装を推進し、わが国を取り巻く社会課題の解決や国際競争力の強化につなげるには、産業界の協力が不可欠である。4月以降、14課題ごとに準備ができ次第、研究開発テーマを公募する。ぜひパブリック・コメントへの意見提出、公募への参加を検討してほしい。

(注1)令和5年度予算案で280億円を計上

(注2)研究開発計画を取りまとめ、研究開発テーマを推進するなど社会実装に向けた戦略および研究開発計画を総合的、機動的に推進する役割を担う

(注3)研究開発におけるプロセス管理のための審査。各研究開発ステージの最後に実施する審査要件を満たせば次のステージに進むことができる

(注4)センサー等から得られる大量データをもとにサイバー空間上に精緻なモデルを組み上げることで、高精度の実証・予測・最適化を可能にする技術

(注5)各課題を担当する管理法人。主に国立研究開発法人が該当する

【産業技術本部】

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