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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月23日 No.3580 マッケイ駐日カナダ大使との懇談会を開催 -カナダの「インド太平洋戦略」をめぐり意見交換/カナダ委員会

マッケイ大使

経団連は1月27日、東京・大手町の経団連会館でカナダ委員会(植木義晴委員長、藤本昌義委員長)を開催した。イアン・マッケイ駐日カナダ大使から、2022年11月に公表されたカナダの「インド太平洋戦略」について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ カナダの優先課題とインド太平洋戦略の意義

カナダの「インド太平洋戦略」は、同地域に対するカナダの長期的かつ強いコミットメントを示すとともに、とりわけ日本との関係を重視している。カナダの外交政策における優先課題は、激しい地政学的競争の時代における平和と繁栄の維持、民主主義の強化、ルールに基づく貿易の促進、新型コロナウイルス後の復興支援、クリーンエネルギーへの移行を含む気候変動対策である。

■ インド太平洋戦略の五つの戦略目標

上記の優先課題に対処するために、「インド太平洋戦略」では、相互に関連する五つの戦略目標を掲げ、必要な予算措置を講じている。

  1. (1)平和、強靱性、安全保障の推進
    インド太平洋地域における軍事的プレゼンス、ならびにサイバーセキュリティーを含む国家安全保障への関与を強化する。実際、日本を含む同地域でのカナダ海軍のプレゼンスは高い。日本近海における違法な船舶間の物資積み替え行為(瀬取り)の監視など多面的な活動を展開している。

  2. (2)貿易、投資、サプライチェーンの強靱性の拡大
    「カナディアン・トレード・ゲートウエー」構想のもと、インド太平洋地域のビジネスパートナーとの連携強化、市場アクセスの拡大、サプライチェーン多角化などを通じて、開かれたルールに基づく貿易投資を促進する。
    現在、米国はインフレ抑制法(IRA)のもと、多額の補助金パッケージを提供している。同法の真の目的はインフレ対策ではなく、他国との関係で競争優位性を確保するため、大規模投資を誘致することにある。同法によってカナダの優位性が失われることはない。カナダは鉱物資源の宝庫であり、また自動車製造に関しても重要な役割を担っていることから、例えば電気自動車(EV)のサプライチェーン・エコシステムを構築するうえで適している。もちろん米国の自動車市場へのアクセスも良好である。

  3. (3)人的投資と人とのつながり形成
    カナダへの留学生数をさらに増加させる。留学生は卒業後、カナダで就職し永住権をとることも可能であり、カナダのみならず地域全体の経済に貢献することを期待している。また、短期の人的交流について、すでに日本との間ではワークホリデー・プログラムが存在する。18~32歳を対象に、カナダで12カ月間、働きながら就学できる制度である。カナダへの留学生数の60%を占めるインド太平洋地域の国々との学生交流も強化する。

  4. (4)持続可能でグリーンな未来の構築
    インド太平洋地域は世界の温室効果ガス排出量の半分以上を占める。急速に経済発展を遂げている同地域において排出削減を推進することは、持続可能性の確保のために不可欠である。カナダは、クリーン/グリーン技術移転、エネルギートランジション支援、環境にやさしいインフラの展開、資金提供等を通じ、気候変動対策を推進する。

  5. (5)インド太平洋へのパートナー国としての積極的な関与
    ASEANとの関係強化も視野に入れたインド太平洋地域特使の任命、フィジーへのカナダ公館の開設、ハワイへの外交官の派遣などを通じて、同地域におけるカナダの位置付けを強化する。

■ 対中関係と日本への期待

カナダと日本は、中国が同地域に与える影響の増大と経済安全保障への脅威に対する懸念の高まりを踏まえ、経済的威圧の特定、防止、解決に向けて協力する。また、われわれは、日本が議長を務めるG7に大きな期待を寄せている。1929年の日加修好以来、ますます強化された日加関係を基礎として、カナダのインド太平洋戦略と調和するG7における日本の優先事項を支持する。

【国際経済本部】

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