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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月23日 No.3580 宇宙基本計画工程表改訂と宇宙基本計画改定 -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

滝澤氏

経団連は1月27日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合を開催した。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の滝澤豪参事官から、宇宙基本計画工程表の改訂と宇宙基本計画の改定について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 宇宙基本計画工程表の改訂

宇宙基本計画は、政府の宇宙開発戦略本部が策定して閣議決定されるものであり、現行の第4次計画は2020年6月に閣議決定された。宇宙開発戦略本部は毎年度、6月ごろに重点事項を整理し、年末に具体的な施策の工程表を改訂している。22年12月23日に改訂した工程表のポイントは以下の5点である。

  1. (1)宇宙活動を支える総合的な基盤
    小型衛星コンステレーションの構築に向けて、増加する衛星打ち上げを国内で実施できるよう、H3ロケットのさらなる競争力強化に向けた研究開発を行う。小型衛星コンステレーションによる光通信ネットワーク技術など基盤技術の開発・実証を行う。日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による宇宙分野の協力を推進する。

  2. (2)宇宙安全保障の確保
    準天頂衛星について、持続測位を可能とする7機体制の構築に向けて、23年度から24年度にかけて5~7号機を打ち上げる。極超音速滑空弾の探知・追尾の実証にかかる調査研究など、ミサイル防衛のための小型衛星コンステレーションについて検討する。

  3. (3)災害対策・国土強靱化や地球規模課題の解決への貢献
    わが国独自の小型のレーダー衛星コンステレーションを25年度までに構築すべく、関係府省による利用実証を行い、国内事業者による衛星配備を加速する。次期気象衛星について、23年に整備し、29年度の運用開始を目指す。温室効果ガス・水循環観測技術衛星について、24年度の打ち上げを目指す。

  4. (4)宇宙科学・探査による新たな知の創造
    米国が進めている月面探査を行う「アルテミス計画」に参加し、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の機器開発等を進めるとともに、20年代後半を目途に日本人宇宙飛行士による月面着陸を実現する。24年度に火星衛星探査計画(MMX)の探査機を確実に打ち上げる。

  5. (5)宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現
    宇宙空間の安全で持続的な利用を確保するため、デブリ除去技術の実証、宇宙交通管理の国際的なルール整備に向けた取り組みを進める。

■ 宇宙基本計画の改定

岸田文雄内閣総理大臣は22年12月23日の宇宙開発戦略本部会合で、23年夏を目途に宇宙の安全保障構想を策定したうえで、3年ぶりに宇宙基本計画を改定する方針を表明した。

改定の大きな理由は宇宙の安全保障利用の拡大である。ウクライナ危機では、軍事作戦への支援や戦場動向の把握などの安全保障の用途において、米国のスペースX社など民間のスタートアップが提供する衛星などが活用されている。

政府が22年12月16日に閣議決定した国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画では、(1)宇宙からの安全保障(2)宇宙における安全保障(3)宇宙産業の支援・育成――が明記された。今後、防衛省の予算が増加し、わが国の宇宙産業に回るという好循環を形成する必要がある。

【産業技術本部】

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