経団連は2月14日、開発協力推進委員会政策部会(台和彦部会長)を開催した。世界銀行の米山泰揚駐日特別代表から、変貌する世界の開発潮流と日本への期待について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 開発援助の分野においても高まる中国の存在感
1980年以降の世界のGDPをみると、G7の国が占める割合は、80年の61%から2022年の43%へと大きく低下した。一方、同時期に中国の占める割合は3%から18%に拡大した。
国連通常予算分担率について、米国は1977年から現在まで1位(約20%)にある。日本は2000年前後に2位(約20%)であったものの22年現在は3位(約8%)であり、中国が2位(約15%)となっている。世界銀行の低所得国向け基金であるIDA(アイダ、国際開発協会)の拠出割合をみると、米国と日本の2国がそれぞれ約14%で上位を占める一方、中国は10年ごろから一気に約5%へと達するなど存在感を増している。さらに、低所得国の対外債務の借入先としても、中国の割合は06~16年ごろにかけて急増している。
■ 途上国は無数の危機に直面
世界の絶対貧困(注1)人口は、世界経済の成長と開発援助の成果もあり、1990年の20億人から、2018年には6.5億人にまで減少した。東アジア・太平洋地域の絶対貧困人口は大きく改善されているが、アフリカは高止まりするなど地域ごとの差が大きい。気候変動によると考えられる台風・サイクロンや洪水による被害も急増している。
医療へのアクセスに課題を有する国が多いなか、日本が長らく重要性を訴えてきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注2)への関心が高まっている。また、所得水準が向上し援助から卒業した国においては、保健分野向け援助の減少が公的負担の拡大によって穴埋めされず、医療費の個人負担が増えている例もあり、UHCを推進するうえでの課題となっている。さらに、途上国においては、新型コロナウイルスによる学校閉鎖で子どもが十分な教育を受けられなかったという課題、食料・燃料価格の高騰による経済・社会への影響が生じている。
■ 日本に期待される世界の議論を主導する役割
こうした足元の課題を踏まえ、世界銀行は、ミッション(貧困削減・繁栄の共有)、業務・財務運営のあり方の見直しを含め、世銀グループ全体の改革に向けたロードマップについて議論している。
23年、日本はG7の議長国であり、世界銀行としても日本を支え、協力していきたい。日本に対しては、資金面での貢献にとどまらず、質の高いインフラや防災、債務の透明性・持続可能性、グローバルヘルスなど数多くの分野で、世界の議論を主導する存在であり続けることを期待している。
(注1)世界銀行が定める国際貧困ライン。1日当たり2.15米ドル以下で生活する層
(注2)すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態
【国際協力本部】