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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年4月13日 No.3587 提言「大規模災害に負けない持続可能な社会の構築」を公表 -国土強靱化基本計画改定に向けて

経団連は4月11日、提言「大規模災害に負けない持続可能な社会の構築~国土強靱化基本計画改定に向けて」を公表した。政府の国土強靱化基本計画の改定が今夏にも見込まれることを踏まえ、経団連の意見を表明するもの。災害発生時の被害を最小限にとどめ、社会経済活動を維持するために優先的に取り組むべき課題として、五つのテーマを取り上げた。提言の概要は次のとおり。

1.災害の「予測・予防」「応急対策」「復旧・復興」のいずれの段階でもDXが不可欠

今後の災害対策においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用は不可欠である。発災前の段階でも、センサー・AIなどデジタル技術を活用すれば、高精度で網羅的な情報を蓄積できる。これら情報をデジタルツイン(現実を再現したデジタル空間)でシミュレーションすることにより、生じ得る災害の影響を具体的に予測し、それを最小限にとどめる対策を講じることや、安全な避難誘導方法の検討等、効果的に予測・予防することができる。

災害時にも的確な支援には関係機関の情報連携が不可欠であり、被災者・支援者双方に必要な情報を迅速に届けることが求められる。また、復旧時には無人化施工の技術を活用できるだけでなく、官民の情報共有により被災者の行政手続きを簡易かつ迅速に行うことができる。

2.予測される災害に対し「事前復興」を推進

想定される災害に対して、(1)準備しておく事前復興(被災後の早期復興に向けた対策の検討)(2)実践しておく事前復興(将来の災害に備えた防災まちづくり)――が必要である。

(1)では、復興マニュアルや復興指針等の策定に加え、災害発生時に困難に陥りやすい高齢者、障がい者、外国人、性的マイノリティー等への配慮(言語、ハラールミール等)も検討しておくべきである。

(2)では、立地規制・建築規制によるリスク回避、丁寧な説明に基づく安全な土地への住民の居住誘導などを通じて、災害リスクが低い地域でコンパクトシティーの形成を目指すべきである。そのために、国の「防災集団移転促進事業」をはじめとする事業・制度を拡充・緩和すべきである。また、DXを活用して地籍調査を進めておくことが、被災後のまちづくりを迅速に進めることにつながる。

3.サプライチェーン、ネットワークの強靱化で社会機能の維持、早期復旧を

被災後、社会機能を早期に復旧させるためには、(1)交通・通信ネットワークの強靱化(2)サプライチェーン全体での事業継続力の強化(3)国・自治体の連携推進やリスクコミュニケーション――が不可欠である。

(1)では、(ア)幹線道路のミッシングリンク解消やダブルネットワーク化(イ)港湾・空港の強靱化と広域連携(ウ)マイクログリッド等による分散型電力インフラ構築(エ)分散データ処理によるネットワーク負荷軽減――などが必要である。

(2)では、あらゆる災害に対して守るべきものを明確にしたうえで、サプライチェーン全体の「多元化」「可視化」「一体化」を進めるとともに、自治体との災害時応援協定の締結などを進めることが重要である。

(3)では、国、地方自治体、企業の役割と権限の明確化、ハザードマップの早期策定・更新等が重要である。

4.情報集約・連携もインフラの維持・更新・運営も官民連携が必要

気象情報などの衛星データはデジタル技術を活用したサービス提供の基盤をなすものである。事業者が活用しやすいかたちで提供するとともに、被災時に備えて行政情報や医療情報のバックアップや標準化を進めておくことが欠かせない。老朽インフラの維持・更新のためには、公営事業の広域化、ソフト化、集約化、共用化、多機能化や、施設整備へのPPP(Public Private Partnership)・PFI(Private Finance Initiative)の活用が重要である。

5.意識向上と人材育成を忘れない

住民が災害時に自ら適切な行動をとれるよう、自治体は防災意識の醸成を促すべきである。また、インフラを整備し、現場復旧の第一線で活動するのは地域の事業者である。その担い手を維持するため、技能保有者を育成すべきである。

6.おわりに

国土強靱化に関する各事業の事業費と事業期間を国土強靱化基本計画等で明示し、当初予算の段階から、これらを計画的に措置する必要がある。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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