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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年4月20日 No.3588 全人代を経た今後の中国の政策 -外務省・経産省から聴く/中国委員会企画部会

経団連は3月27日、東京・大手町の経団連会館で中国委員会企画部会(越和夫部会長)を開催した。外務省アジア大洋州局の園田庸中国・モンゴル第二課長、経済産業省通商政策局の大川龍郎北東アジア課長から、中国の外交・経済政策等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 最近の日中関係

2022年11月、日中首脳会談において、緊密に意思疎通を図ることで一致して以降、外相電話会談や次官級協議等、ハイレベルでの対話が進んでいる。

日中両国間の人的往来は、17年に1000万人を超え、コロナ禍までは右肩上がりに増加した。これにより中国国民の対日感情が相当程度改善した。残念ながらコロナ禍により人的往来が激減し、対日感情は揺れ戻しが生じている。交流を促進することによって、両国の国民感情の改善につなげることが重要である。

23年3月の全国人民代表大会(全人代)で発表された経済社会政策のポイントは、外資誘致の優先度が22年に比べて上がっていることだろう。実際、中国の地方政府幹部は23年に入り、外資導入に向けて積極的に訪日するなど、活発な動きもうかがえる。一方で、中国は自国技術の強化を掲げており、この点には留意が必要である。

中国は、対米関係を外交の中心に位置付けていると考えられる。米中対立の一方で、対欧州を中心とした「ほほえみ外交」も同時に展開しているといわれているが、台湾海峡情勢などをめぐっては引き続き強硬な姿勢がみられる。政府として、中国外交の展開と方向性を注視している。

■ 中国の経済政策

全人代の政府活動報告では、23年の経済成長率を「5%前後」とし、22年の「5.5%前後」から引き下げた。「安定を保ちつつ前進を求める」と、全体的に安定重視の姿勢が示された。また、直面する課題として、主に米国を念頭に置いた「外部からの抑圧・阻害のエスカレート」などの国際問題のほか、国内の不動産問題等を指摘している。

さらに、国務院の機構改革案の一環として、共産党に中央科学技術委員会を設置することが発表された。科学技術分野は「国際的な科学技術競争と外部の抑制・弾圧の厳しい情勢に直面」していると指摘されており、ここでも「外部の抑圧」すなわち米国が意識されている。

中国は科学技術の自立自強を提唱し、技術力強化・独自の技術体系構築を志向している。これは全人代のキーワードの一つでもあり、22年10月の共産党大会における習近平国家主席の政治報告でも強調されたほか、共産党の任務・目標にも記載されている。

近年、中国では政府調達における国産品優遇を強化する動きがみられる。世界貿易機関(WTO)の政府調達に関する協定(GPA)に加入していないため、ルール上は問題ないとも主張している。一方、22年7月に中国政府が公表した政府調達法の改訂草案では、政府調達の当事者を政府だけでなくインフラ関係の国有企業にまで拡大しており、関税および貿易に関する一般協定(GATT)における国産品優遇の例外に抵触する可能性がある。

懸念事項が多いなか、中国ではイノベーションが進んでおり、日本企業にとって稼げる市場でもある。新技術を積極的に受け入れる市場の存在や、エンジニアの確保のしやすさ、コスト競争力の高さ、技術革新を促す最先端技術に対するニーズの存在などポジティブな要素も指摘されている。中国ビジネスは、気をつけたうえで稼ぐことが重要である。

【国際協力本部】

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