1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年4月27日 No.3589
  5. 新たな化学物質規制の概要

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年4月27日 No.3589 新たな化学物質規制の概要 -労働法規委員会労働安全衛生部会・ワーキング・グループ

安井氏

経団連は3月30日、労働法規委員会労働安全衛生部会(今村尚近部会長)と関係するワーキング・グループによる合同会合をオンラインで開催した。厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の安井省侍郎課長から、「労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制の概要」について説明を聴いた。概要は次のとおり。

職場における化学物質規制をめぐっては、特定の化学物質に個別具体的な規制を課す方式から、すべての危険・有害物質(約2900物質)を対象に労働者がばく露する濃度の管理・低減を求め、その達成手段は事業者が適切に選択する方式(自律的管理)への見直しが行われている(2022年2月17日号4月28日号既報)。法令改正後の主な厚労省の対応は次のとおりである。

1点目は、濃度の基準に関する大臣告示の制定(注1)である。新規制では、国が「濃度基準値」を定めた物質のばく露が基準値以下となるように管理する必要がある。濃度基準値には、1日の労働時間のばく露の目安となる「8時間濃度基準値」と、ピーク時の15分間のばく露の目安となる「短時間濃度基準値」があり、まずは67の物質に片方または両方の基準値を設定する。そのうえで、測定時間の重みを加味して実際のばく露の測定値を算出する「時間加重平均値」が各基準値を超えないこととする。濃度の基準をどのように遵守するかは各事業者の対応に委ねられる。今後、参考となる技術上の指針を示す予定である。

2点目は、化学物質の専門家や実務担当者に関する大臣告示の制定である。労働災害が発生するなど、化学物質の管理が適切でない事業場に改善措置の助言等を行う「化学物質管理専門家」の要件を定めた。また、法令に基づくリスクアセスメント(注2)の実施義務がある化学物質等を製造する事業場で選任される「化学物質管理者」(注3)が受講すべき講習内容(講義と実技を合わせて12時間)を定めた。

3点目は、第三管理区分の事業場に関する大臣告示の制定である。作業場所の有害因子を測定した結果、作業環境が適切に管理されていない「第三管理区分」に該当し、その状態を改善できない場合、呼吸用保護具を用いたばく露防止対策の徹底が不可欠となる。その際に選択すべき保護具の要件や装着確認(フィットテスト)の実施方法を定めた。

新たな化学物質規制は23年4月と24年4月の2段階で施行する。厚労省は、新制度の円滑な施行に向けて、電話やメールによる相談窓口の設置、中小規模の事業場に対する専門家の派遣、リスクアセスメント支援ツールの提供等を実施しており、積極的に活用してほしい。

(注1)会合時点で告示は未制定

(注2)化学物質の危険性・有害性を調査し、その結果に基づきリスク低減措置を検討すること

(注3)化学物質管理者はリスクアセスメント対象物の取り扱いや譲渡提供を行う事業場でも選任が必要

【労働法制本部】

「2023年4月27日 No.3589」一覧はこちら