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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年4月27日 No.3589 「カーボンニュートラル行動計画 第三者評価委員会報告書」とCN実現に向けた方策 -環境委員会地球環境部会

経団連は3月27日、環境委員会地球環境部会(右田彰雄部会長)をオンラインで開催した。経団連は、気候変動に関する主体的取り組みの柱として、カーボンニュートラル(CN)行動計画を推進している。提言「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」(2022年5月)においても、CN行動計画の着実な実施をあらためて表明した。

22年度のCN行動計画に関して、第三者評価委員会による評価報告書が取りまとめられたことから、同委員会委員長の内山洋司筑波大学名誉教授から説明を聴いた。あわせて、CN実現に向けた方策について、地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾主席研究員から説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 第三者評価委員会報告書(内山氏)

内山氏

CN行動計画の第1の柱「国内の事業活動における排出削減」については、(1)30年度目標の見直しのペースが加速している点(2)電力業界に加え、幅広い業種において再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みが進んでいる点――などが評価に値する。一方、21年度実績については、13年度比では減少しているものの、20年度比では増加している。これは、新型コロナウイルスに伴う外出制限が緩和され、経済活動が回復したことによる。今後は経済活動がさらに活発になると考えられており、CN達成のためには、これまで以上に省エネ・脱炭素化に向けた取り組みが求められる。

第2の柱「主体間連携の強化」については、(1)削減量を推計する業種が増加している点(2)「グローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献」の事例が増加している点――が評価に値する。

第3の柱「国際貢献の推進」については、日本の優れた技術力とノウハウを積極的に活かしていくことが求められる。「アジア・ゼロエミッション共同体」構想は、アジアにおいて「経済と環境の好循環」を創出するうえで重要な施策であり、こうした政府の取り組みとの連携も期待される。

第4の柱「2050年CNに向けた革新的技術の開発」については、海外市場も視野に入れながら、技術開発・社会実装が着実に進展することを期待する。

■ CN実現に向けた方策(秋元氏)

秋元氏

15年に採択されたパリ協定のもと、各国は意欲的な削減目標を掲げているものの、世界レベルでの排出削減対策は進んでいない。先進国の排出量は減少傾向にあるが、途上国の排出量は増加している。排出削減には、省エネに加えて、原子力、再エネなどの脱炭素エネルギーを活用するとともに、CO2回収・貯留といった負の排出技術によるオフセットも必要となる。

RITEによるシナリオ分析では、30年度に13年度比46%削減することにより、低炭素・省エネの投資は進む一方、エネルギーコストの上昇や消費の落ち込みなどによりGDPが低下するとの結果が出ている。日本経済の成長には外需の取り込みが必須であり、海外での日本製品のシェアを大幅に拡大する必要がある。

一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)やシェアリング・サーキュラーエコノミーによって、エネルギーシステムコストを低下させ、日本のCO2限界削減費用を低下させることが可能である。DX活用による需要側の対策を強化することが重要となる。

「経済と環境の好循環」はナローパスであり、原子力の活用を含めた対応が必須である。それでもCNに向けて対策コストの上昇は避けられない。海外との相対的なエネルギー価格の相違を十分意識し、産業競争力への影響に戦略的に対応するとともに、CNについて、ある程度柔軟性を持った対応も必要である。

【環境エネルギー本部】

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