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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年4月27日 No.3589 統合イノベーション戦略2023の検討状況 -イノベーション委員会企画部会

経団連は4月6日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会企画部会(田中朗子部会長)を開催した。内閣府の樋本諭科学技術・イノベーション推進事務局参事官(統合戦略担当)から、統合イノベーション戦略2023の検討状況や今後の方向性について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 統合イノベーション戦略2023の位置付け

統合イノベーション戦略2023は、2021年3月に閣議決定した第6期科学技術・イノベーション基本計画の3年目の年次戦略であり、政府全体の科学技術政策の羅針盤ともいえる。23年は実効性ある政策を推進するとともに、進捗を踏まえた取り組みの強化や情勢変化への機動的な対応が政府に求められている。現在、6月をめどに同戦略を閣議決定すべく、検討を進めている。

■ 科学技術・イノベーションを取り巻く情勢の変化

科学技術・イノベーションは、社会課題を成長のエンジンに転換することで、持続的な経済成長の原動力となる。また、感染症や自然災害等の脅威に対して安全・安心を確保する観点からも国家の生命線となっている。さらに、昨今のウクライナ情勢をはじめとして国際関係が厳しさを増している。こうしたなか、生成AIや核融合(フュージョンエネルギー)などの先端技術が国民の目にもわかりやすく見えるかたちで急速に発展してきており、投資拡大と人材獲得などの国家間競争が激化している。将来見通しの不透明感が増していることから、科学技術・イノベーションへの期待は新たなフェーズへと進展してきている。

■ 科学技術・イノベーション政策の三つの基軸

統合イノベーション戦略2023では、「三つの基軸」を中心に据えて、一層の取り組み強化と具体化を進めていく。

第1の基軸は、「先端科学技術の戦略的な推進」である。例えば、量子技術の産業化・実用化の推進は、将来の科学技術・イノベーションの前提となる基盤技術を開発するうえで不可欠となってきている。また、次世代におけるカーボンニュートラルの達成にあたり、フュージョンエネルギーも戦略的に取り組むべき重要課題である。いずれも、その推進に向けた国家戦略を強化し、必要な施策を整備する。他方、経済安全保障に関する経済安全保障重要技術育成プログラムの本格的始動と、シンクタンク機能の整備も必要である。加えて、第3期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の実施など社会実装に向けた研究開発も強化する。

第2の基軸は、「知の基盤(研究力)と人材育成の強化」である。10兆円規模の大学ファンドによる国際卓越研究大学と地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージで、研究力と人材育成を強化するとともに、産学官の連携にも取り組んでいく。また、研究デジタルトランスフォーメーション(DX)のプラットフォーム構築や、学術ジャーナル問題(注1)への対応、理数系分野のジェンダーギャップの解消、STEAM教育(注2)の充実、リカレント教育の推進にも注力していく。

第3の基軸は、「イノベーション・エコシステムの形成」である。経団連の提言「スタートアップ躍進ビジョン」を踏まえ、政府では22年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定した。同計画の2年目となる23年は政策の実効性が問われている。このため、スタートアップの徹底支援と資金循環の促進とともに、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想(注3)の具体化にも取り組んでいく。

この三つの基軸のもと、国家的重要課題に戦略的に対応するためにも、産学官において新たな連携を構築し、技術や人材などのリソースを相互につなげていきたい。

(注1)欧米の学術ジャーナルの寡占化に伴い、その購読料が高騰するというアカデミアが抱えている問題

(注2)五つの領域(Science〈科学〉、Technology〈技術〉、Engineering〈工学〉、Art〈芸術〉/Liberal Arts〈教養〉、Mathematics〈数学〉)を対象として、科学技術の素養を涵養するとともに、デザインや芸術、教養の要素を取り入れ創造性も育む教育

(注3)日本の大学・研究機関の人材・研究シーズのグローバル展開に向けて、海外トップ大学の誘致、優秀な研究者の招聘等により、ディープテック分野の国際共同研究とインキュベーション機能を兼ね備えた場づくりを行うための構想

【産業技術本部】

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