1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年5月18日 No.3590
  5. 気候変動対策をめぐる最近の国際動向

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月18日 No.3590 気候変動対策をめぐる最近の国際動向 -経産省の高濱地球環境対策室長から聴く/環境委員会国際環境戦略ワーキング・グループ

高濱氏

経団連は4月20日、環境委員会国際環境戦略ワーキング・グループ(手塚宏之座長)をオンラインで開催した。経済産業省地球環境対策室の高濱航室長から、「気候変動対策をめぐる最近の国際動向」と題し、持続可能な開発のための世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development、WBCSD)が策定したAvoided Emissions(削減貢献量)ガイダンスや、G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合の模様について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ Avoided Emissionsガイダンス

パリ協定(2015年)では、「世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える努力をする」との長期目標が掲げられている。この野心的な目標を達成するためには、企業活動を抑制してCO2排出量を削減するだけでは困難であり、経済成長と両立するような新たな脱炭素の取り組みが必要である。そこで、「削減貢献量」という考え方が重視されてきている。削減貢献量とは、企業がグリーン製品やサービスの普及を通じて社会全体のCO2削減に貢献した量を指すもので、23年3月には、WBCSDが削減貢献量に関するガイダンスを公表した。以前より、削減貢献量の定量化に取り組む企業は存在している。しかし、どのようなものを削減貢献量としてカウントしていいのか、どのように計算するのかなど、一般的、国際的に認められた標準の考え方や計算方法がないことが、削減貢献量によって企業を評価する仕組みの発展・普及の妨げとなっていた。同ガイダンスによって、企業がCO2削減にどれだけ貢献したのか客観的に評価することが可能となる。また、その評価を物差しとして企業に資金を呼び込むことが期待される。今回のガイダンスは第一版であり、今後、より現実社会で使えるものとするための検討や部門別のガイダンスの策定、金融機関とのさらなる連携を進めていく必要がある。

■ G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合(4月15~16日)

G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明では、気候変動の加速化と災害激甚化への懸念が強調されるとともに、パリ協定の1.5℃目標達成と、気候変動に耐え得る強靱な経済社会の構築に向けて、G7がリーダーシップを取ることにコミットした。同時に、各国のエネルギー事情や産業・社会構造、地理的条件に応じた多様な道筋を認めつつカーボンニュートラルを目指すことで一致した。その具体策として、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを他国に呼びかけていくことや、再生可能エネルギーの拡大、ゼロエミッション火力発電に向けた水素・アンモニアの利活用等に合意した。また、こうした取り組みを支援するため、移行計画(注)に沿ったトランジション・ファイナンスの役割や削減貢献量の重要性について認識が一致したことの意義は大きい。

同大臣会合の合意内容を、G7広島サミットやCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)での成果につなげたいと考えている。

(注)低炭素経済に向けたCO2排出量の削減などの目標や行動についての各事業主体の戦略

【環境エネルギー本部】

「2023年5月18日 No.3590」一覧はこちら