1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年5月25日 No.3591
  5. 「農業の成長産業化に向けた提言」を公表

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月25日 No.3591 「農業の成長産業化に向けた提言」を公表

経団連(十倉雅和会長)は5月16日、「農業の成長産業化に向けた提言」を公表した。

日本の農業は、従事者の高齢化や農地の減少等が進み危機的な状況にある。また、世界では人口増加による食料需要の増加等を背景に、食料の安定供給への不安が高まっている。こうした変化を踏まえて、政府は、農政の基本理念や政策の方向性を示した「食料・農業・農村基本法」の見直しに着手した。

そこで、食料安全保障の強化にも資する農業の持続的な成長に向けて政府が取り組むべき施策について、(1)国内の生産基盤の強化(2)輸出の強化(3)環境負荷軽減に向けた取り組みの促進――の三つの観点から整理し、提言を取りまとめた。概要は次のとおり。

1.国内の生産基盤の強化

農業従事者の減少が進む一方で、新たな担い手と期待される法人経営体が増加している。大規模な耕地面積を活かして効率的な経営を行う経営体がさらに活躍できるよう、国内の生産基盤の強化が重要となる。

そのため、農地を集積・大区画化し、意欲ある経営体に集約して効果的に活用すべく、農地中間管理機構の活用促進を進めるべきである。その際、既存の税制措置の見直しに向けた検討も選択肢として考えられる。

また、農業の担い手が最大限に能力を発揮できる環境の整備に向けて、データ利活用やスマート農業に適応する人材の育成促進とともに、日本の農業を支える存在である外国人労働者の在留資格制度の改善も欠かせない。

さらに、農業の高付加価値化に資する高品質な品種への権利侵害による経済的な損失を防止するため、国を挙げた知的財産保護対策の強化が不可欠である。

あわせて、生産性の向上には、生産から小売までさまざまなデータを活用することで、生産者と関連事業者との間で情報共有を強化し、効率的で無駄のないフードバリューチェーンを構築することが重要である。加えて、スマート農業の普及に向けたスマート農機の導入支援の拡充や、新たな食料生産手段として期待されるバイオ技術の研究開発の加速が必要である。

2.輸出の強化

世界の食料需要の増加等を踏まえ、農産物・食品の輸出の強化は喫緊の課題であり、海外でのジャパンブランドの確立に向けた広報宣伝活動の強化が必要である。食品単体ではなく日本の食文化や調理方法のデジタル発信等で、海外需要を戦略的に喚起する施策が求められる。このほか、食品に関する認証の取得支援や、継続的な輸出環境の整備も必要となる。

なお、農産物や食品の輸出促進は、不測時に対応可能な国内食料供給基盤の確立につながり、食料安全保障の強化にも資する。

3.環境負荷軽減に向けた取り組みの促進

環境問題の深刻化やサステナビリティーへの意識の高まりを踏まえ、農業においても環境への配慮は欠かせない。

そのため、農機の電化促進に向けた技術開発の加速や、ゼロエミッション型園芸施設の導入促進が必要である。また、バリューチェーン全体でのデータ共有により、需要に応じた生産・流通を行い、余剰農産物や非効率な輸送を削減することも重要である。

【産業政策本部】

「2023年5月25日 No.3591」一覧はこちら