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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月25日 No.3591 提言「データ利活用・連携による新たな価値創造に向けて」を公表

経団連は5月16日、提言「データ利活用・連携による新たな価値創造に向けて~日本型協創DXのリスタート」を公表した。同提言では、データ利活用・連携によって新たな価値を創造するために、各主体が取るべき具体的なアクションを整理している。概要は次のとおり。

■ 基本的考え方

Society 5.0 for SDGsの実現に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるうえでは、データを最大限活用することが死活的に重要である。その際、データの一極集中ではなく、多様な主体によるデータ連携を通じて、生活者価値を創造することが求められる。

しかしながら、わが国では個社によるデータ利活用がある程度進展した一方で、データの連携は道半ばにある。今後、取り組み全体の設計図として拡張性の高いアーキテクチャーを確立したうえで、ステークホルダーによるデータ連携をスモールスタートで推進していく必要がある。こうした取り組みの中核を担うのは企業にほかならず、「先ず隗より始めよ」の精神で、ステークホルダーをリードすることが求められる。

■ わが国企業におけるデータ利活用・連携の進捗

経団連が会員企業に対し実施したアンケートの結果によれば、多くの企業が社内の効率化や生産性向上のためにデータを利活用している。また、サプライチェーン内におけるデータ連携も、ある程度進展している。しかしながら、広く同業他社や異業種他社とのデータ連携に積極的に取り組む企業は、ごく一部にすぎない。

■ データ連携推進に向けた課題と解決策

データ連携を進めるうえでは、以下三つの課題が存在する。

データ連携推進に向けた主な課題
(1)データ利活用や連携の目的・利益を共有できない

データ連携はあくまで手段であり、その目的は新しい価値の協創にほかならない。データ連携を進めるうえでは、ステークホルダーに持続的な利益をもたらすよう、費用負担のあり方も含めたビジネスモデルを構築することが求められる。

(2)各主体の理解不足

データ連携・利活用にあたって、個人の安心・安全やセキュリティーの確保は大前提であり、企業や政府が丁寧な説明・対話を重ねていくことが求められる。そもそもデータ利活用に対するニーズを認識していない地方公共団体も多いことから、企業との連携に向けた地道な取り組みを継続していくことが重要である。企業にとって、「協調領域」と「競争領域」の線引きが大きな課題となっていることから、各社や業界団体などのリーダーシップが不可欠である。

(3)環境整備の不足

「データを連携して問題ないのかわからない」といった企業の声を受け止め、政府は必要に応じてルールを適正化するとともに、オープンデータやデータ基盤の整備に取り組むべきである。企業においても、秘密計算技術(注)の実装をはじめ、トラストを担保する仕組みづくりへの協力が欠かせない。

■ 経団連のアクション

こうした現状を踏まえ、経団連では、2019年に策定した「個人データ適正利用経営宣言」をアップデートし、個人データの適正な利用はもとより「価値の協創」を念頭に置いた「データによる価値協創宣言」へと改訂する。また、目的とする価値を企業間で共有したうえで、各社の協力を得て「データによる価値協創プロジェクト(仮称)」を組成する。その際、明確な重要業績評価指標(KPI)を設けることで、価値実現に向けたプロジェクトを着実に進める。

DXが遅々として進まない現状を打開すべく、企業のアイデアとリーダーシップにより、日本型の協創DXを今こそリスタートする必要がある。単なる提言にとどまることなく、具体的なプロジェクトを実現するために、会員各社の率先垂範を期待したい。

(注)データを秘匿化したまま処理する技術の総称

【産業技術本部】

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