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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月15日 No.3594 特許出願非公開制度の施行に向けて -知的財産委員会企画部会

2022年5月に成立し、公布された経済安全保障推進法は、4施策の一つとして「特許出願の非公開に関する制度」を掲げている。同制度は公布から2年以内に施行されることとされており、24年春には、安全保障上機微な発明の特許出願について、保全指定により公開を留保する仕組みや外国出願制限等が措置される予定である。

そこで、経団連は5月19日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会企画部会(長澤健一部会長)を開催し、特許庁総務部の吉澤隆総務課長と千本潤介課長補佐から、特許出願非公開制度の特許庁における対応について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 特許出願非公開制度の概要

特許出願非公開制度の趣旨は、公にすることにより国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明の特許出願について、出願公開等の手続きを留保し、情報保全措置を講じるものの、安全保障上の観点から特許出願を諦めざるを得なかった発明者に特許法上の権利を受ける途を開くことである。

同制度の概要は次のとおりである。まず、特許庁は特定技術分野、つまり公にすることにより国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術分野に属する発明が記載されている特許出願の書類を内閣府に送付する(1次審査)。ただし、特定技術分野のうち、保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいと認められる技術の分野については、付加要件による絞り込みを行う。特定技術分野および付加要件は、今後政令で定める。

次に、内閣府は、(1)国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度(2)発明を非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響――等を総合的に勘案し、保全指定を行うか否かを判断する(法令上は「保全審査」であるが「2次審査」とも呼ばれる)。保全指定された場合、発明の内容の開示の禁止等の効果が発生する。

■ 外国出願について

まず、日本国内で行われた発明であって、特定技術分野に属する発明(付加要件のかかる技術分野では付加要件も満たすもの)については、原則として、外国出願が禁止される。外国出願の禁止に該当しない発明であることを確認したい場合は、日本に第1国出願する方法(出願後、一定期間内に保全指定されなかった場合等は外国出願が可能)と、同制度で新たに導入される事前確認の制度を利用する方法がある。

次に、パリ条約による優先権を主張して外国出願する場合、たとえ外国出願が可能な発明のみを出願しても、出願単位で発行される優先権証明書には日本でした特許出願全体が記載される。そこで、特許出願に保全対象となる発明が含まれている場合、その部分はマスキングして優先権証明書を発行する予定である。また、優先権証明書の発行請求を受けた時点で、保全指定される可能性が残っている案件については、発行を留保する予定である。

そのため、日本への出願後、1次審査・2次審査が完了する前に外国出願する場合は、優先権証明書を外国出願後に提出する必要がある。なお、諸外国においては一般的に、優先権証明書の提出期限は優先日から16月であるから、出願後に優先権証明書を提出することは時間的に十分可能である。

法律の趣旨に則った優先権証明書の発行を行うため、特許庁の新たな運用を理解してほしい。

【産業技術本部】

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