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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月15日 No.3594 医療等データの利活用に向けて -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

経団連は5月17日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を開催した。内閣府規制改革推進室の木尾修文参事官から、医療等データの利活用について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 医療等データの利活用に関する議論の全体像

医療等データ(電子カルテや介護記録に含まれるデータ、死亡情報など出生前から死亡に至るまでのデータのうち、診療や介護等に一般的に有用なデータ)について、本人の診療やケアのための利用(1次利用)や、創薬や医学研究など本人のみを対象としない目的での利用(2次利用)を円滑にすることにより、国民の健康増進、治療の質の向上、医療の技術革新等を実現することを企図している。

そのためには、(1)医療等データの利活用のための制度・運用の整備(2)研究者や製薬会社等が医療等データに円滑にアクセス可能な情報連携基盤の構築――等を一体として進める必要がある。

■ 医療等データの利活用に関する制度・運用の整備

医療等データの多くは個人情報保護法における個人データかつ要配慮個人情報にあたるため、目的外利用、取得、第三者提供には原則として本人の同意が必要となる。

1次利用に関しては、これまで運用上の工夫が講じられてきたものの、同意取得の負担が医療関係者等の間での円滑な医療等データの共有を阻害しているとの指摘があった。一方、本人の同意には、本人が知られたくない情報について、その共有先を主体的に限定できるという側面もある。そこで、医療機関や介護施設が医療等データを必ずしも同意なく共有するにあたり、本人に利用停止請求を認めること等が考えられる。

2次利用に関しては、医療等データの医学研究や創薬等への利用時には患者が退院しており、かつ、連絡先も不明である等の理由で、同意を得ることは困難という課題がある。この課題に対して、すでに海外では一定の措置が講じられている。例えば、アメリカの連邦法では、非識別化された医療データ(De-identified Information)を同意なく利用することが可能である。また、欧州連合(EU)のEHDS(European Health Data Space、欧州ヘルスデータ空間)規則案では、公益性の高い用途については、必ずしも本人の同意を必要としない旨が規定されている。

これらを踏まえ、医薬品開発など公益性が認められる目的のための利用については、本人の同意なく仮名化された医療等データの利活用を可能とすることを検討する必要がある。もっとも、医療等データの分析方法によっては本人に対する差別等の不利益にもつながり得るため、合理的水準での医療等データの漏洩防止やデータを取得した者の不適正な利用禁止などについて、法的措置の整備が必要である。

■ 医療等データに関する情報連携基盤の構築

診療等で生まれる医療等データを医療機関内で分散、孤立させず、有機的につなげることで、製薬会社や医学研究者も活用(2次利用)できるよう、公的な情報連携基盤を構築する必要がある。具体的には、医療等データの標準化を図るとともに、医療等データを医学研究や製薬等にも円滑に利用できる社会システムを構築する必要がある。

【産業技術本部】

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