経団連は5月30日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会企画部会(楯美和子部会長)を開催した。豊橋技術科学大学総合教育院の畑山要介准教授から、サステイナブルな消費志向に向き合う商品・サービスのあり方について、説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ エシカル消費の広がり
環境や社会、人に配慮した商品・サービス、企業を選択するエシカル消費が広がっている。従来、エシカル消費の推進においては、消費者啓発によって人々の持続可能性への意識を高めるというアプローチがとられてきた。しかし、エシカル消費は、「意識の高さ」だけでなく、消費志向の変化によって実現されるものでもある。これまで大量生産・大量消費の社会で、物質的な財の所有が幸福の証しとされ、人々がまだ使用できる商品やサービスを買い替えたり、競争的な消費に組み込まれたりしてきた。消費サイクルのなかで疎外されてきた価値を取り戻し、自分らしい選択を追求できることが、エシカル消費の「豊かさ」であるといえる。
■ 生産・取り引きの過程の重視
生産・取り引きの過程で環境破壊や人権侵害等がないことを示すためには、自社に加えて取引先や下請けを含め、継続的・網羅的な精査、追跡可能性の確保が必要になる。この20年ほどの間に欧米で広く普及したのは、第三者機関による認証の取得である。また、取引先や下請けを垂直統合(自社農園化・自社工場化)するという方法や、仲介業者を介さずローカルな小規模生産者と提携して直接取り引きするという方法もある。
これらの方法には、垂直統合だと初期投資が必要であり、直接取引は生産が不安定であるなど、コストや効果の点で課題もある。第三者認証は、商品に認証マークを付けるだけでは、生産者の顔や背景といったストーリーが必ずしも伝わらない。そこで、例えば、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用して、調達の過程の追跡可能性を確保する仕組みもみられるようになった。消費者が製品タグに付いた二次元コードを読み込むことで、農家や生産の様子を確認し、農家を支援できるサービスも登場している。
■ 消費の仕方の変化への適応
従来と比べて「買わなくなった」「持たなくなった」という消費志向の変化に適応したマーケティングが求められる。例えば、シェアリングや修繕・補修、クラフト支援といった「買わなくてもよい」「自ら作る・直す」形態のサービス提供も重要になる。
企業は、サステナビリティー活動の前提として、ガバナンスやコンプライアンス、透明性・公開性を通じて消費者の信頼を獲得し、長期的な企業ブランディングを確立することが不可欠である。一時しのぎの取り繕いだと、グリーンウォッシュ(注)とみなされかねない。また、サステイナブルな商品・サービスを提供していることが、企業や従業員自身の誇りやアイデンティティーにつながるという考え方も重要である。
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説明後、世代ごとのエシカル消費の現状、日本のエシカル文化と個人の購買行動とのギャップ、長期的な企業ブランディングの重要性等について、活発に意見が交わされた。
(注)環境改善効果が伴わないが、あたかも環境に配慮しているように見せかけること
【ソーシャル・コミュニケーション本部】