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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月29日 No.3596 技能実習制度および特定技能制度の見直しの方向性 -産業競争力強化委員会外国人政策部会

本針氏(左)、川口氏

政府は2022年11月に「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」(有識者会議)を設置し、両制度の施行状況の検証や外国人を適正に受け入れる方策の検討を進めている。23年5月、検討の方向性を示した中間報告書を取りまとめた。そこで、経団連の産業競争力強化委員会外国人政策部会(毛呂准子部会長)は6月1日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、出入国在留管理庁の本針和幸政策課長および厚生労働省の川口俊徳海外人材育成担当参事官から、同報告書の概要等について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 中間報告書の概要

わが国の人手不足が深刻化するなか、外国人は経済社会の担い手となっている。外国人との共生社会の実現が社会のあるべき姿であることを念頭に置き、わが国の産業や経済、地域社会を共に支える一員として、外国人の適正な受け入れを図ることが欠かせない。

現行の技能実習制度は、人材育成を通じた国際貢献を制度目的としているにもかかわらず、労働力確保として利用されているケースもあり、制度目的と運用実態の乖離が指摘されている。このことから、現行の技能実習制度を廃止して人材確保および人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべきである。他方、特定技能制度については、深刻な人手不足に対応するため、制度の適正化を図ったうえ、引き続き活用していく方向で検討すべきである。

企業単独型の技能実習の取り扱いや技能実習制度に代わる新たな制度における転籍制限のあり方などについては、最終報告書の取りまとめに向けて議論を続けていく。最終報告書は23年の秋ごろに取りまとめられる予定である。

■ 技能実習制度の現状と見直しに向けた課題

22年度末時点で約32万人の技能実習生が日本に在留している。そのうち約55%がベトナム人であり、ベトナムは有力な送り出し国である。他方で、最近のベトナムから日本への送り出し人数は減少しており、来日する実習生が当面減少基調となる可能性がある。有識者会議での議論を踏まえて、技能実習生が日本に来てよかったと思える制度を設計することが重要である。

技能実習制度は、実習期間を通じて同一企業で実習することを前提としており、原則、転籍ができない。そのため技能実習生がパワハラやセクハラ、いじめ等の人権侵害に遭っても声を上げづらく、実習先から失踪してしまう事例が少なくない。21年度の失踪者は7000人に上り、22年度は9000人を超す見込みである。人権侵害の被害から救済される仕組みを構築することが不可欠である。

また、高い給与が支払われる職場を求めて失踪するケースもある。その背景には、借金をして来日する実習生が約55%に上ることが挙げられる。入国前に実習生が負担するコストを適正化する取り組みが重要である。

有識者会議には、現行の技能実習制度が抱える問題の解決に向けて、具体的な方策の検討を期待する。

【産業政策本部】

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