経団連は、2022年9月に提言「Society 5.0時代の海洋政策」を公表し、政府の海洋基本計画(注)への反映に向け、海洋政策を担当する谷公一内閣府特命担当大臣に建議するなど働きかけてきた。その結果、経済界の意見を概ね反映するかたちで23年4月に「第4期海洋基本計画」が閣議決定されたところである。
そこで6月2日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会(満岡次郎委員長)を開催し、内閣府総合海洋政策推進事務局の村田茂樹事務局長から同計画について、また文部科学省、水産庁、資源エネルギー庁、国土交通省、環境省の幹部から各省庁の海洋関連施策について、それぞれ説明を聴いた。概要は次のとおり。
日本の周辺海域を取り巻く情勢は厳しさを増し、海洋に関する国益がこれまでになく深刻な脅威やリスクにさらされている。また、カーボンニュートラル(CN)の実現や産業構造の転換をはじめ、世界全体の経済構造や競争環境に大きな影響を与える変化が生じている。
こうしたなか、政府は、(1)総合的な海洋の安全保障(2)持続可能な海洋の構築――を柱とする第4期海洋基本計画を決定した。
■ 総合的な海洋の安全保障
海洋安全保障の確保のため、わが国の防衛力や海上法執行能力の強化、海上保安庁と自衛隊の連携の強化に加え、国際的な海洋秩序の維持・発展に向けた施策等を記載している。
また、海洋安全保障の強化に貢献する施策として、経済安全保障に資する取り組みの推進や海洋状況把握能力の強化、国境離島の保全・管理を盛り込んでいる。とりわけ、経済安全保障については、(1)レアアース泥をはじめ海洋由来のエネルギー・鉱物資源の開発・生産にかかる技術の確立や産業化の促進(2)海運業や造船業等の海洋産業の国際競争力の強化(3)自律型無人探査機(AUV)をはじめ海洋ロボティクスや無人観測、センシング技術等の先端技術の育成・社会実装の重要性――を強調している。
■ 持続可能な海洋の構築
脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進め、海洋産業の成長につなげるとともに、国際的な取り組みを通じてわが国の海洋環境の保全・再生・維持と海洋の持続的な利用・開発を図ることとしている。
とりわけ、CNへの貢献のため、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札である洋上風力発電については、安全保障や環境影響を考慮しつつ、領海における活用に加え、排他的経済水域(EEZ)への拡大が必要である。そのため、浮体式洋上風力発電の国産化に向けた技術開発の促進や関連する法整備をはじめとする環境整備を進める旨を盛り込んでいる。
あわせて、ゼロエミッション船の開発・導入や、CO2の回収・貯留を行うCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の事業開始に向けた法整備の加速化を記載している。
(注)政府が総合的かつ計画的に講じるべき海洋施策を定めたもの。概ね5年ごとに見直している
【産業政策本部】