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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月29日 No.3596 ロシア・中央アジアのエネルギー市場に関する勉強会を開催

ザスラフスキー氏

経団連の日本ロシア経済委員会(國分文也委員長)は6月2日、東京・大手町の経団連会館で、米国のコンサルティング会社であるホライズンエンゲージ社の共同創業者兼マネージングパートナーのアレクサンダー・ザスラフスキー氏から、ロシアのエネルギー産業の動向および中央アジア諸国の情勢などについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ ウクライナ戦争によるロシアのエネルギー産業への影響

ウクライナとの戦争において、ロシアのプーチン大統領は、欧州諸国がロシア産エネルギーに大きく依存していることを前提に、エネルギーを「武器」として利用した。開戦から1年以上が経過した現在、戦争の影響はガス部門と石油部門とで対照的である。

ガス部門については、プーチン大統領は、思惑が外れ、失敗を犯したといえる。ロシアからのガス供給が停止されれば、(1)欧州諸国は簡単には冬を乗り切れない(2)対ロシア制裁をめぐりロシアへのエネルギー依存度が異なる国の間で分断が起こる――と想定していた。しかし、暖冬の影響もあり、欧州諸国は最小限の被害で最初の冬を乗り越え、対ロシア制裁への対応についても結束がみられた。結果としてロシアの国営天然ガス会社ガスプロムのガス生産量は減少し、収入・利益も大幅な減額となった。ロシア産ガスの欧州への輸出減は制裁による直接の効果というよりも、ロシアがルーブル払い等の契約にない新たな支払い条件を要求し、これを拒否した欧州諸国に対して圧力を加えるために、ロシアが自らガス供給を削減したことによるものである。

一方、石油部門は、対ロシア制裁を受けても衰退しなかっただけでなく、大幅な成長を遂げた。もともとロシア国内の石油販売市場で欧米企業の占める割合は15%ほどであり、欧米企業が撤退しても販売市場へのマイナスの影響は少なかった。実際に、海上輸出量は日量400万バレルまで回復している。これはロシアがシャドータンカー(影の船団)を使い、欧米の制裁を逃れていることを示している。タンカーの行き先は東南アジアだけでなく、北アフリカなどと幅広く、対象を絞ることは難しい。今後は制裁逃れに対する新たな対抗策が展開されると予想されるものの、シャドータンカーすべてが欧州連合(EU)域内を通るわけではないので、大きな効果は期待できないだろう。

ロシアの石油産業は、仲介業者を使って販売元を偽ることで、制裁とあわせて、ロシア政府への納税も逃れている。2023年1~4月期のロシア連邦歳入に占める石油・ガス産業の割合は前年同期の約5割である。財政赤字は極めて大きく、すでに通年の計画を上回っている。ロシアから戦費調達のための資金を奪うという意味では、制裁はかなり効果があるといえる。

■ 中央アジア諸国の情勢

カザフスタンは、侵攻当初ロシアを批判した。そのため、両国の関係は悪化していたものの、最近は安定しているようにみえる。ここ数カ月の間に、ロシアのロスアトム社がカザフスタン最大のウラン鉱山の権益を獲得した。

ウズベキスタンは、再生可能エネルギーの分野で大きな成果をあげている。最近発表された新たなプロジェクトでは、30年までにエネルギー構成の40%を再エネで賄うことを目指している。ウズベキスタンのこれまでの実績からすればこの目標は非常に現実的であるものの、生産したエネルギーを国内に配給するための電力網が不十分であることが課題である。

【国際経済本部】

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