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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月6日 No.3597 わが国スタートアップエコシステムの過去・現在と未来への展望〈1〉 -スタートアップ振興の歩み/デロイト トーマツ ベンチャーサポート

政府は6月に「経済財政運営と改革の基本方針2023」を発表し、あらためて2027年度のスタートアップ投資額を現在の10倍を超える10兆円規模にするとした。スタートアップ(SU)をめぐる動きが各所で活発化していることを受けて、本シリーズでは3回にわたりSUをめぐる過去・現在と未来への展望について解説する。第1回は、SUを生み育てるエコシステム(生態系)の担い手であるベンチャーキャピタル(VC)、大企業、政府・公的機関の08~10年ごろからの歩みを振り返ってみたい。

■ 国内VCの産業化

国内スタートアップの資金調達総額に占める事業会社からの調達割合の推移

(図表のクリックで拡大表示)

08年ごろは、金融系VCが多く、独立系VCは少なかった。リーマンショックの影響で、SUによる資金調達の総額が年間約700億円程度に落ち込み、資金調達が困難な時代であった。

しかし、資金調達の総額は、その後概ね堅調に増加して、21年に約8000億円に達するとともに(図表参照)、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の会員数も08年の年初には107社だったが、22年末時点で329社にまで拡大した。この背景には、(1)官民ファンドの活動(2)独立系VCの増加(3)コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の増加――が挙げられる。

まず、産業革新機構や中小企業基盤整備機構の官民ファンドにより、VCへのLP(Limited Partnership)出資が行われたのが大きい。国によるリスクマネーへのチャレンジがVC産業化の一歩を推し進めたといえる。同時に、事業会社によるLP出資も増加したことで、VCの産業化が進み、新卒採用や中途採用を行う流れができ、知見者が増えて、さらに独立系VCが増加するという好循環が生まれた。

また、13年ごろから日本のCVCが萌芽期を迎えたことも重要である。製品ライフサイクルの短縮化に伴い、オープンイノベーションに取り組む大企業が増えるのと連動して、自社の中核事業との将来的なシナジーを求め、潜在性の高いリソースに出資する事業会社の資金がSUに流れ始めたことが、現在ではSU成長の大きな資金源になっている。

■ 大企業とSUの接点強化

10年ごろは、SUの社会的認知度は低く、大企業と接点をつくるのは困難な取り組みであった。SUの成長には大企業とのアライアンス・ネットワーク形成の場が必要だと考え、デロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)はMorningPitchを13年の年初にスタートさせた。

大企業のオープンイノベーションへの関心の高まりもあり、KDDIが11年にKDDI ∞ Labo、12年にCVCのKDDI Open Innovation Fund(KOIF)設立、オムロンが14年にCVC設立、東急が15年から東急アライアンスプラットフォーム(TAP)を運営など、各業界で先駆けとなる取り組みが生まれ、SUと大企業の距離を近づけてきた。19年には経団連のピッチイベント Keidanren Innovation Crossing (KIX) も始まった。さまざまなかたちでSUと大企業との連携を促進する動きが増加したことで、近年SUの社会的認知が向上し、両者の接点はつくりやすくなっている。

■ 政府・公的機関によるバックアップ

10年ごろは、政府によるSU向けの施策は少なかったが、12年の安倍政権から大きく加速した。13年の産業競争力強化法によるベンチャー投資の加速、18年の「J-Startup制度」導入、22年の経団連「スタートアップ躍進ビジョン」等は今に至る大きな影響を与えた動きである。あわせて、東京都の各種SU支援プログラムの提供、日本貿易振興機構(ジェトロ)のSU海外展開支援など、SUの創出・育成に寄与する取り組みが規模を拡大して継続して実施されてきた。

SUを政府・公的機関がバックアップする取り組みは、社会的信用度の獲得・向上につながり、国内外の企業や投資家が安心して、連携・投資を行うための環境整備に貢献している。


わが国スタートアップエコシステムの過去・現在と未来への展望(全3回)
〈1〉スタートアップ振興の歩み
〈2〉「スタートアップ育成5か年計画」の背景とその実現に向けて
〈3〉海外を活用した日本の新たなスタートアップエコシステムの形成へ

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