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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月20日 No.3599 バルト三国および中東欧地域の政治経済情勢 -ヨーロッパ地域委員会企画部会

経団連のヨーロッパ地域委員会企画部会(清水章部会長)は6月29日、オンラインで会合を開催した。尾崎哲駐リトアニア大使、宮島昭夫駐ポーランド大使、INPEXソリューションズの篠原建仁調査事業部上席研究員から、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)および中東欧地域の情勢について、それぞれ説明を聴いた。松村之彦駐エストニア大使、髙瀨寧駐ラトビア大使、外務省の中村仁威欧州局参事官も参加した。概要は次のとおり。

■ 尾崎大使

尾崎大使

バルト海・黒海・アドリア海に囲まれた中東欧12カ国は「三海域イニシアティブ」と呼ばれる経済協力枠組みを立ち上げ、エネルギーやデジタル、運輸の分野でインフラ整備を進めている。ロシアによるウクライナ侵略を受け、安全保障の観点から、同地域の地政学的重要性が一層高まっている。域内の連結性を強化しロシアから切り離すことが、欧州全体にとって重要である。

■ 宮島大使

宮島大使

6月21、22の両日、英国・ロンドンでウクライナ復興会議が開催され、日本から林芳正外務大臣のほか、企業も多数参加した。今後、官民連携のもとウクライナ復興支援に取り組むうえで、バルト三国および中東欧地域との連結性が課題となる。ポーランドは、ウクライナ避難民を100万人以上受け入れ、米、英、独に次ぐ軍事支援を行っている。もともと欧州における物流ハブを目指していたが、侵攻後、ウクライナ復興支援におけるハブとしての役割も注目されている。企業を支援すべく、ポーランド政府もウクライナ復興に関する保険システムの整備を進めている。ウクライナにおける汚職などのリスクに対処するうえで、同国におけるビジネス経験が豊富なポーランド企業との連携は有益であり、日本企業との連携も期待される。

■ 篠原氏

篠原氏

バルト三国は、旧ソ連の支配を受けていた歴史的背景からロシアへの警戒感が強く、ウクライナを積極的に支援している。中国への警戒感も強い。また、旧ソ連諸国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、モルドバ、ウクライナ)を対象とした欧州連合(EU)東方パートナーシップを支持している。連結性の観点から、ロシア経由の東西ではなく、南北をつなぐインフラを整備し、地域として成長することを標榜している。欧州における物流ハブとしての機能を強化すべく、現在、バルト三国を南北に縦断し、ポーランドにつなげる鉄道プロジェクト「レール・バルティカ」が進行中であり、2030年の完成を目指す。EUと同じ軌道幅で敷設されるため、貨物の積み替えの問題が解消される。

ウクライナ侵攻前は、石油、天然ガスのロシア依存が顕著であったが、現在はいずれも輸入していない。対ロシア依存脱却を確実にするため、液化天然ガス(LNG)ターミナルの整備、ガスパイプラインの容量拡張、洋上風力発電を中心とする再生可能エネルギーの拡大、水素利用に注力している。これらの分野を含め、日本企業にとってビジネスチャンスとなり得る。また、再エネの拡大にあたっては、送電網の安定性が不可欠である。日本としても、日EU連結性パートナーシップや三海域イニシアティブといった枠組みを通じて、この地域のインフラ分野での協力を拡大し、関係強化を図ることが期待される。

◇◇◇

このほか、松村大使から、エストニアが対ロシアを念頭においたサイバーセキュリティーに尽力していること、髙瀨大使から、ラトビアがバルト三国の中心に位置する国として経済、安全保障の両面でハブとなっていることを紹介した。また、中村氏は、各国でのビジネス参画の可能性について、日本企業にタイムリーに情報提供できる方策を考えていきたいと発言した。

【国際経済本部】

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