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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月27日 No.3600 2023年度宇宙開発利用推進委員会総会を開催 -宇宙安全保障構想および新たな宇宙基本計画/宇宙開発利用推進委員会

高市大臣(右から4人目)、漆間委員長(同3人目)、泉澤副委員長(同5人目)

経団連は7月7日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(漆間啓委員長)の2023年度総会を開催した。高市早苗内閣府特命担当大臣(宇宙政策)のあいさつに続いて、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の風木淳事務局長が、宇宙安全保障構想および新たな宇宙基本計画について講演した。概要は次のとおり。

なお講演後、総会議件である2022年度活動報告・収支決算および2023年度活動計画・収支予算を報告し、役員改選案を審議・承認した。

■ 高市大臣あいさつ

宇宙システムは、外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力といった国力の強化を図るうえで、すべての基盤となる重要なものである。経団連の「宇宙基本計画に向けた提言」(3月14日公表)も踏まえ、政府は6月13日に、宇宙開発戦略本部において宇宙安全保障構想を決定するとともに、3年ぶりに宇宙基本計画を改定し、閣議決定した。同計画では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の機能強化のほか、官民のリスク分担や物価・為替変動への対応を含めた、必要に応じた契約制度の見直しなどを打ち出している。しっかりと進めていきたい。

ロシアによるウクライナ侵略などを受け、安全保障上、宇宙空間を活用した情報収集力と継続的な情報通信は、ますます重要性を増している。合成開口レーダー衛星(注)の活用や、小型衛星コンステレーションの構築も推進していきたい。

また、測位技術やスペースデブリの除去に関する技術はわが国の強みである。準天頂衛星システムの11機体制の早期構築や、G7サミットの首脳宣言も踏まえたデブリ除去技術の確立に注力していきたい。加えて、宇宙の開発利用の基盤である輸送能力の強化や、セキュリティ・クリアランス制度の構築にも引き続き取り組んでいく。

■ 風木氏講演

宇宙政策においては、経済成長と安全保障の観点も踏まえつつ、国際的な勝ち筋を見いだすべく大局的な視点で政策を推進していく。特に今後の宇宙産業の成長は、課題解決のための宇宙「利用」の分野の進展にかかっているといえる。わが国の宇宙市場は、これまでの研究開発や技術の蓄積に加えて、スタートアップや異業種の参入といった新たな潮流が生まれ、活気に満ちている。

宇宙安全保障構想策定の背景となったのは、22年12月に9年ぶりに改定された国家安全保障戦略である。同構想では、わが国が宇宙空間を通じて、国の平和と繁栄、国民の安全と安心を増進しつつ、同盟国・同志国等と共に、宇宙空間の安定的利用と自由なアクセスを維持することを目標にしている。(1)安全保障のための宇宙システム利用の抜本的拡大(「宇宙からの安全保障」)(2)宇宙空間の安全かつ安定的な利用の確保(「宇宙における安全保障」)(3)安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現――を基本的なアプローチとしつつ、全体観を把握しながら、宇宙安全保障にかかる政策を推進していく。

また宇宙基本計画においては、宇宙利用の四つの目標と将来像を示し、20年先を見据えた今後10年間の宇宙政策の基本方針を定めた。さらに、その実現手段として、今後わが国が研究開発に取り組むべき技術とその方針を示した「宇宙技術戦略」も新たに策定する予定である。失敗を恐れず、高い頻度で宇宙実証を行うアジャイルな開発手法を取り入れつつ、技術的優位性の強化や、サプライチェーンの強化に資する技術開発を推進していきたい。

(注)夜間や天候に関係なく運用でき、また情報を広域にわたり収集できるという特長を有するレーダーを利用した衛星

【産業技術本部】

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