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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月27日 No.3600 OECD諮問委員会2023年度総会を開催 -OECDと多国籍企業行動指針に関し意見交換/OECD諮問委員会

経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は7月5日、東京・大手町の経団連会館で2023年度総会を開催した。経済協力開発機構(OECD)のアラン・ヨルゲンセン責任ある企業行動センター長と外務省経済局の石川真由美経済協力開発機構室長から、6月のOECD閣僚理事会で改訂版が正式採択された「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」(指針)について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ OECD・ヨルゲンセン氏

ヨルゲンセン氏

指針は、企業活動が社会や環境に及ぼす影響や企業のガバナンスなど、ビジネス活動に関する問題を包括的にカバーしている。気候変動・デジタル化・サプライチェーンの強靭化といった今日的な課題に対処するために改訂されたが、変わっていない重要な点が三つある。

一つ目は、企業が自主的に取り組む性格のものであるということ。ただし、各国政府は、企業が指針を遵守するよう推奨している。二つ目は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などの既存の合意と整合性を確保していること。三つ目は、デュー・ディリジェンスのプロセスである。自社の事業やサプライチェーンを超えた取引関係全体の負の影響を特定・評価し、負の影響の停止・防止・軽減を図るのみならず、適切な是正措置の実施等を求めている。こうした認識は新しいものではない。

経団連やBIAC(Business at OECD、OECDの公式諮問機関)が改訂プロセスに参加してくれたことに感謝する。

■ 外務省・石川氏

今次改訂に向けた交渉にあたり、(1)企業にとっての予見可能性・実現可能性を確保する(2)同指針が既存の国際スタンダードを超えないようにする――という2点に留意しつつ交渉に臨んだ。改訂は多岐にわたるが、第2章一般方針では、デュー・ディリジェンスの適用範囲に、上流のみならず下請けやフランチャイズ等の下流の事業者を含むことが明確にされた。ただし、消費者は除外されており、関係先が多い場合はリスクが高い主体を優先すべきとしている。また、環境に関する第6章では、気候変動や生物多様性等への悪影響に関するデュー・ディリジェンスへの期待が明確化された。科学・技術・イノベーションに関する第9章では、技術の開発や販売、ライセンスの供与、データの収集・利用などに関して、デュー・ディリジェンス実施への期待を追加した。

◇◇◇

意見交換では、「労働者」の定義が広がり、サプライチェーン上の供給会社等が雇用する労働者もデュー・ディリジェンスの対象になり得ることへの懸念が表明された。また指針の文字数が大幅に増加したため、周知が不可欠との意見が出された。これに対してヨルゲンセン氏は、OECDはeラーニング等さまざまなツールを持っていると紹介した。

【国際経済本部】

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