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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年8月3日 No.3601 第124回経団連労働法フォーラムを開催〈2〉 -報告Ⅰ「問題社員対応の法的留意点」

渡邉氏

経団連と経団連事業サービス(十倉雅和会長)は、経営法曹会議協賛のもと「第124回経団連労働法フォーラム」を7月12、13の両日、オンラインで開催した(7月27日号既報)。今号では、1日目のテーマ「問題社員対応の法的留意点」について、渡邉和之弁護士からの報告、および参加者の質問に関する討議の模様を紹介する。

■ 問題社員への対応のポイント

問題社員の例としては、職場規律や業務命令の無視、怠業、能力不足などが挙げられる。近時は、SNSの普及やリモート勤務の拡大、中途採用者の増加等の変化により新たな問題が発生している。こうした問題社員には、事実調査や証拠化とともに、原因に応じた的確な対応、対応マニュアルの策定が必要である。誤った対応をとると、問題行動の悪化や会社等への損害賠償請求、懲戒処分・解雇等の無効などにつながり、対応がさらに難しくなる。

■ トラブル類型別の問題社員への対応

  1. (1)能力不足社員の普通解雇を検討する場合には、原則として教育指導などの解雇回避措置をとり、また能力不足であることを具体的に立証することが極めて重要である。なお、地位・職種が特定された中途採用者については、解雇回避措置の必要性が緩和される。

  2. (2)協調性がないなど、勤務態度不良社員にメンタルヘルス不調が疑われる事象が認められた場合には、専門家への受診打診や休職の検討など慎重な対応が求められる。

  3. (3)ハラスメントに関しては、まず事実関係を迅速かつ正確に確認し、加害者・被害者への対応とともに研修や社内ルールの再整備などの再発防止策が求められる。被害者の私怨等が疑われる場合でも、公益通報者保護法の対象ならば原則調査を行うべきである。

  4. (4)近時の問題として、許可制のリモート勤務制度の会社において労働者が遠隔地に転居を希望する例がある。リモート勤務を不許可としたにもかかわらず、転居し出勤しなかった場合は、正当な理由のない欠勤や業務支障がある等の事由で懲戒処分ができると解する。なお、リモート勤務の許否判断は、恣意的・差別的にならないよう留意すべきである。

<質疑応答・討議>

「問題社員が発生しないようにするにはどうすればよいか」という質問に対しては、まず採用段階で会社・社員間でのミスマッチの回避に努め、問題に対しては毅然とした対応が重要と回答した。出社義務があるにもかかわらず一切出社しない社員への対応について、会社にリモート勤務における許否の裁量が広い等の場合は、欠勤扱いとし必要に応じて懲戒処分ができるとの回答があった。一方で、その場合のリモート勤務中における成果物の受領の是非等について議論があった。

【労働法制本部】

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