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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年9月7日 No.3604 こども政策の課題と展望 -人口問題委員会

経団連は7月31日、東京・大手町の経団連会館で人口問題委員会(永野毅委員長、清水博委員長、井上和幸委員長)を開催した。渡辺由美子こども家庭庁長官から、「こども政策の課題と展望」と題し、6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」および今後3年間の「加速化プラン」の内容等について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ こども・子育て政策の課題

2030年代に入ると、わが国の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化に歯止めが利かなくなることが懸念される。30年代に入るまでの今後6~7年が、次世代に向けた対策を打つラストチャンスになっている。これまでも保育サービスや育児休業制度を中心に充実させており、過去10年間で少子化対策関係予算はほぼ倍増している。国際比較で用いられる家族関係社会支出は、対GDP比で1.7%と経済協力開発機構(OECD)平均2.1%に若干及ばないが、対国民1人当たりGDP比で11.0%と、英国やフランスに並ぶ水準になっている。

ではなぜ、少子化のトレンドを反転できないのか。われわれは、若い世代が結婚や子育ての将来展望を描けないこと、男性の育休取得にみられるように、制度と実際の利用にギャップがあること、そして、共働き世帯が増えるなかで、家事・育児の負担が依然として女性に偏り、「共育て」ができていないこと等が要因と考えている。

■ こども未来戦略方針の全体像

こうした課題を踏まえ、こども未来戦略方針では、「若い世代の所得を増やす」「社会全体の構造・意識を変える」「全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」という三つの基本理念を掲げている。

また、今後3年間で集中して取り組む「加速化プラン」を取りまとめた。ライフステージを通じた経済的支援の強化として、児童手当を見直し、(1)所得制限の撤廃(2)支給期間の延長(3)第3子以降の支給額を3万円に増額――を行う。所得制限撤廃について経済界から疑義が示されたことは承知しているが、こどもに着目したユニバーサルな給付、すべての子育て世帯へのベースとしての経済的支援というメッセージを打ち出したい。このほか、「共働き・共育ての推進」としては、男性育休の取得促進をはじめ育児休業の制度・給付両面からの拡充、育児期を通じた柔軟な働き方の推進等に取り組む。

■ 財源について

まずは徹底した歳出改革、具体的には社会保障改革により、公費を節減するとともに、保険料負担の増え幅を一定程度抑制することで財源を確保したい。

これに加え、新たな支援金制度の枠組みを構築する。支援金は、企業のみが負担する子ども・子育て事業主拠出金と異なり、労使折半、かつ高齢者にも負担してもらうことを考えている。マクロでみて、支援金の負担増が、社会保障改革を通じた保険料負担の増え幅の減少分で相殺されることを目指す。

今後、年末の予算編成において、「加速化プラン」の財源が固まっていくことになる。経済界ともよく相談して進めていきたい。

【経済政策本部】

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