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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年9月7日 No.3604 個人事業者等の安全衛生対策 -労働法規委員会労働安全衛生部会・ワーキング・グループ

船井氏

経団連は7月21日、東京・大手町の経団連会館で、労働法規委員会労働安全衛生部会(大野隆久部会長)および関係するワーキング・グループによる合同会合を開催した。厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課の船井雄一郎主任中央労働衛生専門官から、個人事業者等に対する安全衛生対策の検討状況について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 検討の背景

労働安全衛生法(安衛法)は施行以来、雇用される労働者を保護の対象と位置付けてきた。しかしながら、2021年5月の建設アスベスト訴訟の最高裁判決では、安衛法22条は同じ場所で働く労働者でない者も保護する趣旨と判断された。そこで、関係する省令を改正し、危険有害作業を行う事業者に、作業の請負人や同じ作業場所の労働者以外の者に自社の労働者と同等の保護措置を講じる義務を課した(23年4月1日施行)。

さらに、同省令改正の審議の際に、同法22条以外の規定のあり方や注文者による措置のあり方等を別途の場で検討することとなり、22年5月に「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」が発足した(1月12日号既報)。

■ 現時点での合意事項

6月末までに検討会を12回開催した。現時点で概ね合意が得られた事項を紹介する。

まず、危険有害作業に関する災害の防止に向けて、主に三つの視点で整理した。

第1に、個人事業者等自身に求められる対策である。(1)厚生労働大臣が定める規格や安全装置を備えない機械・器具等の使用を禁じる規制の対象への追加(2)車両系建設機械やフォークリフト等の定期検査の義務付け(3)危険有害作業に従事する場合の教育受講および修了の義務付け――などがある。

第2に、注文者(発注者)に求められる対策である。(1)注文者の責務を定めた安衛法3条3項の趣旨や内容の明確化(2)個人事業者等に対する「指揮命令」と「安全上の指示」との関係の整理(3)複数の業種の事業者(個人事業者等を含む)が混在して作業する場所を管理する者に当該作業による災害を防止する措置の義務付け――などがある。

第3に、災害リスクを生み出す者(発注者を除く)に求められる対策である。(1)機械や建築物の貸与者が講じる災害防止の措置の保護対象に個人事業者等を追加(2)当該機械や建築物の範囲を必要に応じて拡大(3)プラットフォーム事業者にも安衛法3条3項が適用され得ることの明確化――などがある。

以上のほか、過重労働やメンタルヘルス不調の防止については、(1)個人事業者等自身による就業時間の管理やストレスチェック受検の促進(2)個人事業者等が請け負う業務の量・内容や契約期間の長さ次第で、健康診断にかかる費用を安全衛生の経費として請負契約に盛り込むことが望ましい旨の明示――などがある。

■ 引き続きの検討事項

個人事業者等の業務災害に関する報告の仕組みを中心に議論が続いている。第12回の検討会では、報告対象を「死亡または休業1カ月以上が見込まれる負傷」としたうえで、報告主体は、被災した個人事業者等と同じ場所で働く直近上位の注文者を基本とする事務局案を提示した。委員からは、「労働災害の報告を踏まえ休業4日以上を報告対象とすべき」「個人事業者自身を報告主体とすることを検討すべき」といった意見が出された。

【労働法制本部】

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