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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年9月7日 No.3604 国際エネルギー情勢の展望と課題 -エネルギー情勢に関する懇談会を開催

小山氏

経団連は7月26日、エネルギー情勢に関する懇談会をオンラインで開催した。同懇談会は、2022年来のエネルギー資源価格高騰を受け、国内産業への影響やわが国の政策的な対応を把握するため、数回にわたり開催する。その第1回として、日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事から、最近の資源・燃料価格の動向と今後の見通しについて説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 国際エネルギー情勢からみる地政学的対立と安定供給

22年のエネルギー市場では、原油・ガス・石炭の価格がいずれも大幅に高騰し、不安定化が加速した。ウクライナ侵略によるロシアの化石燃料輸出への懸念があり、安定供給確保やエネルギー安全保障が喫緊の課題となった。

原油については、世界経済の鈍化により価格が下落し始めた時期に、OPECプラスが追加減産を決定した。これは、原油価格の下支えを通じたロシアの経済力維持につながる。また、産油国は、米国と対立を深める中国との接近も図っている。こうしたことから、今後、米国、中国、ロシア、サウジアラビア等の中東産油国の間で、地政学的な対立が深まることが憂慮される。

一方、ガスに関しては、ウクライナ侵略により欧州ガス危機が発生し、欧州が米国からの液化天然ガス(LNG)輸入を増加させた結果、途上国等に対する供給が不足し価格が高騰した。今後、各国が自国の安定供給を最優先とすれば、中国によるLNG輸入拡大の可能性と相まって、欧州・アジア間、ひいては世界全体でLNG獲得競争が生じると危惧される。価格高騰と市場秩序の混乱を再び招かないためにも、国際的な連携・協調と、先進技術の商用化への投資を含めた供給量増加への対策が必要である。

■ エネルギー安全保障強化と脱炭素化の両立

昨今の価格高騰と需給不安定化により、エネルギー安全保障がエネルギー問題の中核となった。日本における原油の中東依存度は90%台半ばと、石油危機の時を上回っており、エネルギー安全保障の強化が課題である。また、世界全体では、市場安定のための国際的な協力枠組みの再整備に加え、ロシアへの依存度の低減や有事に備えた対策として、十分な供給力の確保と脱炭素化に向けた適切な投資が重要である。欧州ではREPowerEU計画に象徴されるとおり、エネルギー安全保障の強化、脱ロシア対応が、再生可能エネルギー拡大や水素活用といった脱炭素化への取り組みによって推進されている。地政学的な対立と世界の分断が深まる状況下で、エネルギー安全保障の強化と脱炭素の両立が求められる。

■ 今後の日本の政策課題

ウクライナ侵略等の情勢や、各国におけるエネルギー安全保障強化の重要性の高まりを踏まえ、日本における政策課題としては、まず30年エネルギーミックス実現への取り組みを強化することが重要である。原子力発電所の再稼働・運転期間延長・新増設への具体的かつ着実な取り組みとともに、合成燃料やCCS(二酸化炭素回収・貯留)・CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)などイノベーションへの取り組み強化も求められる。

また、次期エネルギー基本計画策定に向けた政策議論も必要である。カーボンニュートラル実現と、世界の分断を前提としたエネルギー安全保障強化の両立を目指すことが重要である。市場原理を基本とした原子力推進体制の見直しも含め、国家の政策を明確に示し、経済成長を実現するためのエネルギー基本計画を策定することが今後のカギとなる。

【環境エネルギー本部】

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