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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月5日 No.3607 ASEAN経済統合と日ASEAN連携の展望 -アジア・大洋州地域委員会

清水氏

経団連は9月7日、東京・大手町の経団連会館でアジア・大洋州地域委員会(原典之委員長)を開催した。九州大学大学院経済学研究院の清水一史教授から「ASEAN経済統合・RCEPと日ASEAN経済連携」と題して説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ASEAN域内経済統合の歩み

ASEANは1967年に設立され、76年から域内経済協力を開始した。当初、集団的輸入代替重化学工業化戦略を通じて、国産化による工業化を推進したが、87年に外資を呼び込む戦略に転換して以後、急速な工業化を実現した。88年には日本企業の提案により、ASEAN各国で自動車部品の集中生産と相互補完を図るBBCスキーム(ブランド別自動車部品補完流通計画)が採用された。これは、ASEAN経済統合の動きと企業の生産ネットワーク構築が合致した例であり、大きな成果を生み出した。

97年のアジア経済危機はASEAN諸国に大きな打撃を与えた。その後、域内経済協力の深化に向けてASEAN経済共同体(AEC)の実現を目指した。2015年末には域内の物品関税がほぼ撤廃され、その後のサービス、投資や労働力の自由化につながっている。また、アジア経済危機を契機に、ASEANプラス3(日中韓)、東アジア首脳会議(EAS)をはじめ、東アジアの地域経済協力枠組みが構築された。いずれもASEANが交渉の場を提供し、自らが中心となって議論する仕組みがつくられていることを特徴としている。

■ 厳しい世界政治経済情勢とASEAN

17年にトランプ米大統領の就任を一つの契機に、米中間の貿易摩擦が拡大し、21年のバイデン大統領就任以後も対立は継続している。

21年のミャンマーでの軍事クーデターは、ASEANとしての一体性に大きな負の影響を与えている。5項目合意や特使派遣などを通じて対応を行っているが、大きな進展がないまま現在に至っている。

一方、ASEANはAECを進化させ、着実に経済統合を進めている。そして20年11月には東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議で同協定の署名が行われ、22年1月に発効した。また、ASEAN物品貿易協定のアップグレードの開始、サービス貿易や投資の自由化などを進めている。

■ 対等なパートナーとして共通課題の解決に向け連携

日本とASEANの対話は、1973年の日ASEAN合成ゴムフォーラムにさかのぼる。77年には福田赳夫内閣総理大臣が対ASEAN外交3原則を発表し、アジア経済危機の際には金融分野の支援枠組みを日本が主導するなど、日本はASEANにとって最も緊密な関係を構築してきた。また、日本企業はASEANの経済統合政策を活用して生産ネットワークを拡大するとともに、現地での技術協力と人材育成にも貢献してきた。2023年、日ASEAN友好協力50周年を迎えるなか、ASEANにおける日本の相対的な存在感の低下が指摘される。日本はこれまで積み重ねてきたものづくりをはじめとするさまざまな分野での協力とともに、デジタルやイノベーション、そして自然災害、省エネルギーなど双方の共通課題における連携を推進することが重要である。また、日ASEANは経済規模でも対等に近づいており、ASEANから学び、相互協力を進めることが必須になっている。

【国際協力本部】

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