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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月5日 No.3607 香港の一国二制度の現状 -日本・香港経済委員会

岡田大使

経団連は9月8日、日本・香港経済委員会(國部毅委員長、池田潤一郎委員長)をオンラインで開催した。在香港日本国総領事館の岡田健一総領事(大使)から、最新の香港情勢について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 司法制度など一国二制度は存続

選挙制度の変更や言論の自由の制限等を理由に、香港の一国二制度は完全に形骸化したと報道されることがある。

しかし、まず、一国二制度は政治にのみ適用されるものではない。経済など、引き続き無傷のまま残っている分野も存在している。ビジネスや文化交流には正確な現状認識が必要であり、一国二制度の現状について正しい知識を得ることが重要である。

また、一国二制度は、政治面でも完全に形骸化したわけではない。香港は、司法の独立性に対する信頼があったからこそ金融センターとして機能してきたが、信頼の根幹である司法制度は引き続き維持されている。香港の最高裁判事のうち半数以上は英国、オーストラリア、カナダの最高裁判事経験者であり、さらにその半数は同3カ国の最高裁長官経験者である。判事の構成からも、コモンローに基づく予測可能な判決が下されるものと理解される。香港国家安全維持法(国安法)関係の裁判であっても、香港政府が敗訴するケースがあり、司法の独立性は損なわれていないといえる。

国安法施行後、民主的選挙という観点では大きな後退がみられるが、治安は明らかに回復した。毎年6月4日に開催されていた天安門事件の追悼大会は2023年も開催されなかった一方、明示的なデモではない抗議活動が許容されるなど、若干の緩和もみられた。

■ 世界の金融・物流センターとしての地位を堅持

香港の人口は過去3年間減少が続いたが、23年から増加に転じた。香港人の減少は変わらないものの、欧米人が戻ってきたようだ。欧米人の転出理由は、国安法やデモではなく、あくまで厳格な新型コロナウイルス規制によるものだったため、コロナ禍が落ち着いた現在、人流が回復してきた。

香港は引き続き、金融センター、物流センターとしての機能を果たしているといえる。23年の「世界金融センター指数」では、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールに次ぐ第4位であり、世界全体ではいまだに上位にある。22年の空港別航空貨物取扱量は世界第1位、港湾別コンテナ貨物取扱量は第9位と、香港は安定した地位を堅持している。

■ ALPS処理水放出に関する香港側の対応

香港では、一部言論に対する締め付けはあるものの、福島第一原子力発電所のALPS処理水放出の報道に際して、日本側の主張や科学的根拠にも予想以上にかなり言及するなど、報道の中立性が守られている部分も存在する。ALPS処理水放出と同日、日本産食品の輸入規制を強化したが、当該規制は中国本土やマカオと比較すると緩やかである。また、中国大陸の規制に足並みをそろえるべきだという批判もあったが、香港特別行政区政府の謝展寰・環境生態局長は、規制拡大の必要はないと発表した。謝氏は、日本産食品の輸入規制は行うものの、自らは輸入される日本食品を食べ続けるとの考えを公に複数回表明しており、ALPS処理水放出への対応をとっても、香港は独自のスタンスで臨んでいることがわかる。

【国際協力本部】

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