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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月5日 No.3607 GPIFの最近の取り組み -GPIFとの懇談会

塩村氏(左)、村田氏

経団連は9月7日、東京・大手町の経団連会館で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)との懇談会を開催した。GPIF ESG・スチュワードシップ推進部の塩村賢史部長、村田真理課長から、GPIFの最近の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。金融・資本市場委員会から約70人が参加した。説明の概要は次のとおり。

■ GPIFの役割と運用(塩村氏)

日本の公的年金は、現役世代が納めた保険料を、その時々の年金受給世代に給付する仕組みになっている。しかし、今後は現役世代が減少するのに伴い、保険料収入も減っていく。そこで、年金制度では、将来の年金財政の一部を、被保険者の保険料を運用した収益で賄うこととしている。その保険料を安定的に運用するのがGPIFの責務である。国内株式、外国株式、国内債券、外国債券に対して、概ね25%ずつの分散投資を行っており、株式の90%以上はパッシブ運用を行っている。

GPIFは、2001年度から23年度第1四半期までの累積で約127兆円の運用収益を確保し、年金積立金の運用資産額は約219兆円に上る。運用収益率は年率で3.97%であり、政府の運用目標を踏まえても、まずまずの成績だと思う。今後も、安定的な運用に努めていきたい。

■ GPIFのESGに関する取り組み(塩村氏)

GPIFは、(1)100年スパンの年金制度の一端を担う「超長期投資家」(2)広範な資産を持つ資金規模の大きな投資家である「ユニバーサル・オーナー」――という特徴を持つ。こうした特徴を踏まえると、GPIFが長期にわたって安定した投資収益を確保するためには、投資先企業の価値が持続的に高まるだけでなく市場全体の持続的・安定的成長が重要となる。そこで、GPIFでは、財務的な要素に加えて、非財務的な要素であるESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した「ESG投資」を推進している。

GPIFは、地球環境の改善等を直接の目的としてESG投資を行っているのではない。あくまで、被保険者の利益のために中長期的な収益を確保する観点から、ESG投資を行っている。一方で、投資先企業の事業活動により環境や社会に対するインパクトが生まれ、そのインパクトが収益やコストを生み、企業価値に影響を与えるとの観点から、インパクトの計測も重視している。ESG投資は、ESG指数に基づくパッシブ運用で行っており、資産額は12.5兆円である(22年度末時点)。

また、GPIFは、年金積立金のアセット・オーナーとして、運用受託機関を選定し、運用を委託すると同時に、長期的な企業価値向上のため、受託機関に対して投資先企業との間でESGを考慮に入れた建設的な対話(エンゲージメント)を行うことを求めている。

■ 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート結果
(村田氏)

同アンケートの目的は、運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価とエンゲージメントの実態を把握することにある。東証株価指数(TOPIX)構成企業を対象としており、経団連にも協力してもらった。

アンケート結果によると、IRミーティング等における機関投資家の変化について、4割以上の企業が好ましい変化を感じている。また、(足元の業績のみならず)長期ビジョンがテーマに挙がったケースも増えている。運用受託機関から企業への社外役員との対話要請も増えており、前向きに検討している企業が多い。

このように、企業と運用受託機関との建設的な対話は着実に進んでいる一方で、対話や議決権行使についての課題も提起されている。運用受託機関には、同アンケート結果を、投資先企業とのエンゲージメントや、投資先企業への議決権行使に活用するよう、求めていきたい。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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