1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年10月12日 No.3608
  5. 新しい資本主義における消費者政策の動向

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月12日 No.3608 新しい資本主義における消費者政策の動向 -消費者政策委員会

新井氏

経団連は9月20日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会(稲垣精二委員長、吉田淳一委員長)を開催した。消費者庁の新井ゆたか長官から、新しい資本主義における消費者政策の動向と今後の見通しについて説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 賃金と物価

岸田政権は、新しい資本主義の実現に向けて「賃金と物価の好循環」という目標を掲げている。現状、例えば、消費者に身近な「食品」関連の製造業は、賃金が低く、労働生産性が低い状態が続いている。昨今の原材料費高騰のなかでも、コストを価格に十分に転嫁できていないケースが多い。賃金上昇のためにも、食品関連業界全体での生産性向上、消費者が納得(共感)できるような説明の実施や、官民の協働が求められる。また、今後日本の人口は減少していく見込みであり、国際関係のリスクを見極めつつ、海外市場を開拓していくことも重要になる。

■ デジタル化の進展と消費者政策

消費者被害を減少させる「消費者政策」の重要性が高まっている。急速にデジタル化が進展するなか、消費者をだまして購入させる、いわゆる「ダークパターン」の手法が高度化している。業法による事前規制や法執行だけでは規制に限界があるため、優良な事業者の取り組みの可視化・適性の評価等を通じて、官民共同で健全な市場をつくることが求められる。また、消費者法制全般を通じて、消費者保護が消費者の自由や自律性の否定につながらないこと、イノベーションによる将来の消費者利益を阻害せず、健全な取り引きを促進することも重要である。

最近の消費者政策を三つ挙げる。第1に、改正景品表示法が23年5月に成立し、24年秋ごろに施行予定である。違反行為に対する抑止力を強化するため、課徴金制度を見直し、罰則規定を拡充する。また、同法の告示で、23年10月から、「広告」であることを明示しない広告(ステルスマーケティング)を規制対象として追加する。

第2に、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律が23年1月に施行された。

第3に、改正公益通報者保護法が22年6月1日に施行された。ビッグモーターの不正問題を受けて、消費者庁は同社の内部通報体制を調査した。

■ 新しい資本主義と社会課題の解決

社会課題の解決が慈善事業ではなく、付加価値創造の源泉としてビジネスになっていくためには、企業や当事者だけでなく、多くの消費者が活動に参加し、消費の好循環が生まれることが重要になる。持続可能な社会の形成に向けて、環境負荷軽減や人権配慮等への意識が高まりつつあるなか、企業・社会がその意識を受け止めて商品・サービスを提供していくことが、今後の成長につながっていく。

◇◇◇

説明後、デジタル化の進展に伴う「ダークパターン」の高度化等に対抗するための欧米の消費者政策の現状、官民での共同規制の重要性、「口約束でも契約は成立する」など、基本的な事項の消費者啓発の必要等について意見が交わされた。

意見交換後、同委員会において報告書「サステナブルな商品・サービス選択の推進~共感・応援消費を通じた社会課題解決」を取りまとめた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

「2023年10月12日 No.3608」一覧はこちら