1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年11月2日 No.3611
  5. 「モビリティ産業」の今後の展望と課題

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月2日 No.3611 「モビリティ産業」の今後の展望と課題 -モビリティ委員会

経団連(十倉雅和会長)は10月5日、モビリティ委員会(十倉委員長、豊田章男委員長、有馬浩二委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。経済産業省製造産業局の伊吹英明局長から、「自動車を取り巻く国内外の情勢とモビリティ産業の展望」、日本自動車工業会の長田准総合政策委員長から、「自動車産業における課題」と題した説明をそれぞれ聴くとともに意見交換した。オンラインを含め約300人が参加した。

冒頭、十倉会長は、多くの委員が参加・協賛するジャパンモビリティショーへの期待を表明するとともに、「企業活動のゲームチェンジとなる重点分野に対して、大胆な投資を官民連携で推進し、時代にそぐわない規制・制度をスピード感をもって見直していく必要がある。日本経済のダイナミズム、競争力向上のためにはクリーンエネルギー政策の加速や、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化が不可欠であり、モビリティ産業が先頭に立って、産業界全体で取り組めるよう、皆さまの力添えをお願いしたい」と述べた。

十倉会長

有馬委員長

豊田委員長

概要は次のとおり。

■ 伊吹氏説明

(1)自動車を取り巻く国内外の情勢と政策の方向性

伊吹氏

世界の自動車販売台数8000万台のうち、日系メーカーは約30%のシェアを占めている。出荷額は56兆円(国内製造業の20%)、雇用は550万人(国内全産業の10%)と、自動車産業はまさに日本経済と雇用の「屋台骨」である。

一方、電気自動車(EV)シフトの加速化を主因として、中国、ASEAN地域では近年大きくシェアが下がっている。世界市場におけるEV比率は10%であるが、日系シェアはわずか1.8%にすぎない。そのため、「多様な選択肢の追求」という前提のもと、「EVでも勝つ」ための取り組みが必要不可欠である。

世界では米国のインフレ抑制法(IRA)をはじめ、自国への投資囲い込みの動きが加速している。世界の投資獲得競争に向けて、戦略分野の国内投資について新たな減税支援制度の創設や、「有志国連携」による新たな国際貿易ルールづくりを検討している。

自動車政策の方向性は大きく3点である。一つ目は「グローバルな投資獲得競争への対応」、二つ目は「国際競争力の強化」、三つ目は「モビリティ産業」への進化である。

(2)「モビリティ産業」の展望

CASE(Connected, Automated, Shared & Service, Electrified)技術の普及により、自動車産業の構造に大きな変容が見込まれる。一つ目は、「人・モノの移動」への新たな付加価値の創出、二つ目は自動運転の進化による移動の空間・時間の変化、三つ目は物流や過疎地域等における社会課題の解決である。例えば、物流産業の運転手不足の解消に向けた自動運転の社会実装、移動診療車によるオンライン診療、自動車の蓄電池利用による再生可能エネルギー活用等である。

「モビリティ産業」の創出・実践への挑戦に向けて、政府としても必要な施策を講じ、官民連携で取り組んでいきたい。

■ 長田氏説明(自動車産業における課題)

自動車産業は、モビリティ産業への発展による新しい価値創出、CO2排出削減(マルチパスの着実な推進)を実現していく。産業界と官とが一体となって優先的に取り組むべき課題は、(1)物流・商用・移動の高付加価値化・効率化(2)EV普及のための社会基盤整備(3)国産電池・半導体の国際競争力確保(4)重要資源の安定調達、強靭な供給網の構築(5)国内投資を促進する通商政策(6)競争力あるクリーンエネルギー(7)業界をまたいだデータ連携や部品トレーサビリティーの基盤構築――の七つである。

■ 意見交換

意見交換では、有馬委員長が、「諸外国では保護主義的な通商政策が加速しており、このままでは日本でのものづくりが難しくなる。思い切った産業政策・通商政策とモビリティ産業が一丸となることが重要である」と指摘した。

また、豊田委員長は、「個社でできることには限界がある。業界を超えて、協調分野を広げ、一緒に未来をつくっていくことへのコンセンサスが得られたように思う。未来は信頼と共感でつくるものであり、未来の自分から、現在の大人である自分に『ありがとう』と言える行動・発言を目指したい」と発言した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

「2023年11月2日 No.3611」一覧はこちら