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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月9日 No.3612 エステベス米商務次官と懇談

エステベス氏

経団連の通商政策委員会企画部会(神戸司郎部会長、清水祥之部会長)とアメリカ委員会連携強化部会(豊川由里亜部会長)は10月20日、東京・大手町の経団連会館で、アラン・エステベス米国商務次官(産業安全保障担当)との懇談会を開催した。エステベス氏の発言概要は次のとおり。

ロシアによるウクライナ侵略、中東情勢の悪化、北朝鮮によるミサイル開発、中国による軍の近代化と経済的威圧等、世界は脅威に満ちている。これに対し、米国は攻めと守り両方の政策を講じている。

攻めの政策としては、産業競争力の強化が挙げられる。例えば、CHIPS法の目的は、米国内に半導体産業を形成し、半導体の安定的な供給を担保することにある。また、信頼に足る堅牢なサプライチェーンの構築も優先事項である。特に重要鉱物の供給源の多元化は重要であり、このために同志国との協力が必須である。中国は、ガリウムやゲルマニウムの輸出規制を行っており、経済的威圧に屈するわけにはいかない。

一方、守りの政策の一つが輸出管理である。目的は、米国ならびに同盟国の安全保障の確保にある。例えば、ウクライナ侵略を受けて、日米を含む37のパートナー国が、ロシアに対して厳しい輸出規制を実施している。この効果は、ウクライナの戦場に直ちに表れるものではないかもしれないが、ロシアによる軍事力の回復・強化を妨げ、長期的には事態の鎮静化につながることが期待される。また、中国に対しては、2022年10月から、半導体ならびに半導体製造装置に対する輸出管理を実施している。先端半導体や、その製造に利用されるスーパーコンピューター等に対象を限定している。10月17日に、輸出許可申請が必要となるかを判断するため、先端半導体のパラメーターの調整等のルールを改正したが、いずれにしても、対象品目を可能な限り絞り込んでいる。米国は中国との完全なデカップリングは望んでおらず、輸出規制等を通じて中国の経済成長を阻害する意図もない。

輸出規制を実施するうえでの米国商務省の基本理念は、「small yard, high fence」である。すなわち、安全保障上の理由で規制対象とする品目は必要最小限に限定すべきという方針である。規制による産業界への影響を最小限にとどめ、イノベーションを阻害しないよう配慮するとともに、明確でわかりやすい規制内容にすることが重要である。一方で、技術は日進月歩であり、国家安全保障の観点から、規制対象品目の不断の見直しが不可欠である。この点において、ロシアが参加するワッセナー・アレンジメントでは、規制対象品目にかかる合意の形成が極めて困難であり、時間も要する。ワッセナー・アレンジメントに替わる新しい国際枠組みの構築の検討を始めている。

今後は、量子コンピューターやAIに対する規制強化が重要性を増すだろう。こうした技術を実際に利用する産業界の意見も聴取しながら、規制の内容を慎重に検討していきたい。

【国際経済本部】

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