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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月16日 No.3613 知的財産推進計画2023と最近の動向 -知的財産委員会・クリエイティブエコノミー委員会

奈須野氏

政府の知的財産戦略本部は2023年6月、「知的財産推進計画2023」を決定した。同計画が「知財戦略の重点10施策」の一つとして掲げる「標準の戦略的活用の推進」は、知的財産委員会が国際標準戦略のあり方を検討していくうえで重要な示唆を与えるものである。また、「デジタル時代のコンテンツ戦略」として、コンテンツ産業の構造転換・競争力強化やクリエイター支援等も盛り込まれていることから、クリエイティブエコノミー委員会が4月に取りまとめた提言「Entertainment Contents ∞ 2023 ~Last chance to change」の実現に向けて、同戦略の動向を注視することが肝要である。

そこで、経団連は10月27日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会(津賀一宏委員長、遠藤信博委員長、時田隆仁委員長)とクリエイティブエコノミー委員会(南場智子委員長、村松俊亮委員長)の合同会合を開催し、内閣府知的財産戦略推進事務局の奈須野太事務局長から、「知的財産推進計画2023」と最近の動向について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 生成AI時代における知財のあり方

生成AI技術が急速に発展する一方、著作権侵害が多発するなどさまざまな問題が発生している。そこで、政府の知的財産戦略推進事務局は23年10月に「AI時代の知的財産権検討会」を設置し、生成AIと知財をめぐる懸念・リスクへの対応や、AI技術の進展を踏まえた発明の保護のあり方等について検討を進めている。また、著作権法等に関する論点に加え、クリエイターの関心事である収益還元等を議論するほか、学習用データセットとしてのデジタルアーカイブ整備に関する課題の整理等を行うこととしている。

■ 知財の活用促進に向けて

無形資産のなかでも知財の重要性が高まっている。厳しい国際競争を勝ち抜くためには、企業が無形資産を活用した事業ビジョンを開示し、投資家との対話を通じてブラッシュアップすることが重要である。こうした問題意識のもと、23年3月に改訂した「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver. 2.0」では、知財・無形資産の投資活用による企業価値向上に関して、投資家等の役割を明確化した。

また、特許の有効活用を促すべくスタートアップ・大学の知財エコシステムの強化に取り組んでいるほか、研究開発費の流出防止や研究開発投資の生産性の可視化という観点から、イノベーションボックス税制の導入に取り組んでいる。

■ 標準の戦略的な活用

サーキュラーエコノミーやサステナブル・ファイナンスなど、社会課題の解決に向けて、新たな価値や規範を国際ルール化し、市場を獲得するビジネス戦略として国際標準化を進める動きが拡大している。今後、経済安全保障を念頭に、重点的に取り組むべき分野として、量子技術等の先端技術領域、生物多様性等の新領域等を特定するなど、総合的な標準戦略の策定に向けて検討する必要があると考えている。その際は、経団連からもぜひ意見をもらいたい。

■ デジタル時代のコンテンツ戦略とクールジャパン戦略の本格稼働

コンテンツ産業の競争力強化に資する構造転換等を支援するほか、クリエイターに適切な対価を還元し、優秀な人材が創作活動に自由に取り組める環境を整備する。また、簡素で一元的な権利処理が可能となる制度が23年通常国会の著作権法改正によって創設されており、その運用に必要な体制を整備していく。

漫画・アニメやゲームを中心に、日本のコンテンツの海外展開は増加傾向にあるものの、映画や音楽など強みを十分に活かしきれていない分野もある。

そこで、(1)海外展開のさらなる推進(2)クリエイター支援・コンテンツ産業の構造改革(3)国際政治情勢リスクへの対応――を課題として、新しいクールジャパン戦略の策定に向けて検討を進めていく。

【産業技術本部】

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