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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月16日 No.3613 スマート農業の推進にかかる取り組み -農水省・農研機構から聴く/農業活性化委員会企画部会

経団連は10月17日、東京・大手町の経団連会館で農業活性化委員会企画部会(川添雄彦部会長)を開催した。農林水産省農林水産技術会議事務局の内田幸雄研究総務官および今野聡研究調整課長、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の山田広明総括執行役から、わが国農業の生産性向上に貢献することが期待されるスマート農業にかかる取り組みとその推進状況について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 農水省

スマート農業とは、「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」の総称である。すでに、耕運・整地を無人で行える自動走行トラクターが開発されるとともに、水田の水をスマートフォン等から遠隔または自動で制御できる水管理システム、農作物の収穫時期をAIで判定し拡張現実(AR)でレンズに表示できるスマートグラスなどの研究も進んでいる。

スマート農業のさらなる社会実装に向けた取り組みとして、先端技術を実際の生産現場に導入し、技術の導入による経営改善の効果を明らかにする「スマート農業実証プロジェクト」を2019年から実施し、これまで全国217地区で実証を行ってきた。同実証プロジェクトを通じ、労働時間の削減や収量増大等の効果が確認される一方、スマート農機の導入コストやスマート農業技術に詳しい人材の不足といった課題も明らかになった。農水省としては、人口減少下においても、生産水準が維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するためには、スマート農業技術の導入による生産性の高い農業への転換を加速することが必要と考えている。引き続き、さらなる技術開発やスマート農業の普及のための環境整備等に総合的に取り組んでいく。

他方、スマート農業技術に適した生産・流通・販売方式の確立には、経済界の協力が欠かせない。新技術の開発・普及、ならびに食品事業者をはじめとした関係業種と連携していくため、経済界とも歩調を合わせ、積極的に施策を推進していきたい。

■ 農研機構

農研機構は、わが国の農業と食品産業の発展のため、育種、栽培、スマート農業、バイオテクノロジーなどの分野において、基礎・応用研究から普及まで、成果を創出・実用化している。現在はAI・データ技術等の共通基盤技術を活用したデータ駆動型農業技術の研究開発を強化している。国の重要目標・戦略を技術面で支えるべく、研究開発・普及と知的財産の活用を一体的に推進している。

生産性の向上と持続性の確保に向け、農研機構では、(1)自動化・ロボット技術を活用したスマート農機(2)機械作業に適した栽培体系や品種(3)肥料・農薬の低減技術――の開発等を行っている。また、データを活用したスマート農業を拡大するため、民間企業と連携し、農業データ連携基盤「WAGRI」を運用している。19年の運用開始以来、会員数・アクセス数ともに拡大している。近年では、このデータを活用して、卸売市場の調査情報を提供するアプリケーションなどが公開されており、注目がさらに集まっている。

今後も、経済界をはじめ関係各所と緊密に連携し、研究開発と人材流動のハブとして、次世代の農業・食品分野の産業エコシステムの構築とイノベーション創出に向けた取り組みに注力していく。

【産業政策本部】

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